革製品のオーダーメイド 銀座 オーソドキシー

Order example

2013.05.2

当店の「牛革」の作り方 ~牛革を取り巻く環境~

さて、大上段に構えたタイトルを付けてしまいましたが、

平たく言いますと 今日は、

みなさまから寄せられる なるほど!という質問についてお書きします。

 

それが 先日のご紹介記事の続きにもなりますし。

 

 

kawa6

 

今日いただいたご質問は、

「皮を採るための動物って、どこで育ててるんですか?」

なるほど~ いいご質問です。盲点を突かれました。

 

まず最初に説明しなくてはいけない事は、

 

「皮を採るための動物」なんて いません、、ということ。

 

皮は、牛でも豚でも羊でもぜ~んぶ 食用の肉を採ったあとの副産物です。

あ、クロコダイルも リザードも オーストリッチだって同じこと。。

 

 

kawa1

 

 

別の言い方をしますと

食用の動物たちは、どこも残すところなく 全身を使われます。

すばらしい事ですね。

 

皮とはそういうものですから、一頭一頭みんな、皮膚の状態が違います。

ひとりひとりの人間の皮膚の状態が違うのと、まったく変わりません。

 

それで、厚さや、キズの多い少ないや、キメなど、

一枚一枚ぜんぶ違って、合皮のように 均一ではないのです。

 

 

kawa2

 

 

一方、石油やゴムなどから作る合皮であれば、

レシピさえ統一すれば、同じ質の合皮は、いくらでも作れます。

 

とにかく、食用動物の副産物である「皮」部分は、

なめされて、

靴や洋服やバッグの材料素材の 「革」になります。

 

 

kawa3

 

 

世の中のほとんどの革は、量産品を作る材料となりますから、

一枚の革から、なるべくたくさんの製品を作れるように、

キズや、皮膚の下の繊維が壊れている部分 がわからなくなるように、

たいていの革には、ど~んと、厚い厚い化粧を施しています。

 

そうすると、まるで合皮のように、均一に出来上がりますから、

革の目を見たり、皮膚の下の質を考えずに、

だれでも

簡単に、たくさん作る事が可能になります。

 

 

kawa4

 

そういう革は、革本来のツヤこそ出ませんし、

ついたキズは治りませんが、

多少の雨でもシミになりませんし、きれいな色の革が作れます。

 

それが、大量に作る製品の、革の加工の仕方。

良いとか悪いということではなく、単純に

大量生産品は

まず素材としてそういう革を作らないと 製作できない、

というだけの事実です。

 

それにしても おもしろいのは、

「合皮」は、本革を目指して作られ

ほんものの革に見えるものほど 良いとされている中で、

 

最近の革は、限りなく合皮の特長に近づいている、ということ。

 

その証拠に、

私たちプロでも、合皮かどうか わからないことが多々あります。

 

 

kawa5

 

 

当店の特製牛革は、

良い意味であれ、悪い意味であれ 「革」でありたいと望んでいます。

 

ですから、

最低限の、肌を整える基礎化粧だけをして、

自然の加工をしてもらっているだけなので、

キズや血筋やトラジマなどが、見えやすい仕上げになります。

 

これは、均一に見えるように加工する方法とは、

対極の作り方をした革です。

 

しかし、その革の作り方だけが、

使って なでで行くと、どんどん 革本来のツヤが出ますし

香りよし、

手ざわりに独特の柔らかさが出ます。

 

昔からの、みなさんのイメージどおりの革、

いわゆる 「革って、使って行くと味が出るんですよね!」

と よく みなさんがおっしゃるイメージのままの革を

目指して作っています。

 

 

kawa7

 

 

しかし、一方で、

「どんな革が良い革なんですか?」というご質問もいただきますが、

ひとくちで、これが良い革ですよ、と言えるものはありません、

とお答えしています。

 

それは、使う人が何を望んでいるか、

その内容によって、何を「良い革」とするかが異なるものだと、

オーソドキシーは思っています。

 

しかし、オーソドキシーが、みなさまにお伝えしたいのは、

昔からの、革らしい革の良さです。

 

ほんもののツヤの出方、におい、手ざわり、柔らかさ、etc.

工業製品では味わえない、

五感すべてに訴えるすばらしい素材、「革」だけの良さ、です。

 

 

kawa8

 

 

狂牛病の騒動以来、久しく時間が経ちますが、

この病気の最終的な影響は、まさにいま、革を扱う私どもが感じています。

 

牛の飼料として、肉骨粉を使えなくなったことを発端に、

 

→ 牛の育ちが悪くなる

つまりは、肉の総量が減り、皮の厚みも薄くなる

→ 以前よりたくさんの頭数を殺さなくてはならなくなる

→ 放牧から殺すまでの養生の期間が短くなる

→ 牛の皮についた傷が治らないまま、皮になってしまう

→ 原皮のキズや厚みのなさが、

革になったときの製品作りに多大な影響を与える

 

こういう、風が吹けば桶屋が・・・的な悪い連鎖があり、

いつまでこの品質の牛革を作り続けられるかわからない状況です。

 

ものの作り方がどんどん変化しているこの時代に、

このような昔ながらの質の革を

なるべく長く作り続けられるよう、みなさんも願っていてください。

 

関連記事

  • トラベラーズ_ノートカバー

    「トラベラーズノート」手帳カバーのオーダーメイド

  • 使い込んだブリーフケースのすばらしさ

  • ハンティングショルダー

同様のアイテムを見る: