2019.06.17

イタリアへ誘ったメンズ鞄、オーバーナイトバッグのご紹介。

今日は

本日からデザイナーが訪ねて行っている

イタリア、ブレターニャ社の革についての

エピソードをお話ししましょう。

 

それにはまず、革の購入に当たっての

前提についても触れたいと思います。

 

さて、ご紹介している鞄は、

今年の超大作の一点、

メンズのオーバーナイトバッグです。

以前のクライアントが たまたま

欲しいバッグが見つからない、

ということでご注文くださった鞄。

 

 

じつはこちらの鞄、当初は

ブレターニャ社の防水革での製作を

お薦めしておりました。

 

ところがいざ製作に入りますと

なんと、縫って返す「縫い返し」の製法だと

革の表面が割れてしまうことに

気づいたのです、この衝撃!

 

軽く縫い返しのテストをして

それが大丈夫だったので

お薦めしたのですが、

こういうこともあるのです…

 

 

日本では

ぱっと見て、こういう製品に向かない革、

とわかるものはまずありませんので、

驚きました。

 

でもこの革は、

日本ではまだ誰も使っておらず

どんな革なのか、誰も知らないという状況。

 

外縫い製品を作るだけなら

まったく問題ありませんが、

とりあえず確認することに…

 

さっそくイタリアに連絡したところ、

「とてもデリケートで

複雑な加工をしているから、

そういうこともあるだろう。」という答え。

 

 

ある程度予測はしていましたが、

どうやら向こうでは、

「使えるように使いなさい。」ということです。

 

欲しいと思った人が、

そのデメリットを回避しつつ、

工夫して思ったように作る、というわけ。

 

革を作る人に

その革を使った製品製作について尋ねるのは、

ナンセンス、ということでもあります。

 

なんと日本の常識と

かけ離れていることでしょう!

 

 

当初、防水革でお作りして

クライアントには、雨知らずに

出張にお持ちいただくつもりだったのですが、

急遽、当店特別製牛革に変更していただき、

 

革の成長を楽しんでいただく方向に、

という方針でご理解いただきました。

 

こんな大きな変更もお受けいただけて、

ほんとにありがたいことです。

持ち手の赤部分だけは、

予定通り防水革を使うことにしました。

 

なぜなら、

この赤は日本では出ないお色だからです。

この組み合わせは

このクライアントに最高にお似合いです。

 

 

日本のタンナーは、

自然の素材ゆえ限界のある革に対して、

イタリアのタンナーではあり得ないような

言われのないクレームを受け続け、

結果、そういう方面からの

技術を上げてきました。

 

その最高品が、当店の特別製牛革です。

㈱栃木レザーで作られている牛革です。

 

外縫いでも内縫いでも

どんなリクエストにも応えられる、

魔法の牛革。万能の素材です。

 

 

ところが、このイタリアのタンナーは

毎年毎年、驚くべき新作を出してきます。

 

定番の品質をいかに安定させて作るか、

が課題である日本のタンナーとは

まったく違うスタンスで、革を作ってきます。

 

わたしなどは

ひと目見て、その新鮮さと美的な世界に

ノックアウトされてしまいますが、

 

今回のような、最先端の

「タンニン鞣しx高耐水性」革は、

まだ世界で 誰も作っていません。

 

新しい革を入れ、その特徴を知って

それに見合った作り方を探す必要は、

一般的な量産品型の製作においては

まったくありません。

 

特に日本の製作現場では、単に

「使える」革しか要求されないからです。

 

 

さてここで最初の

革の買い方、について少し触れますと、

何のことはない、大きなロット、つまり

大量に製作することを前提として

注文しないと一種類の革すら入手できない

ということ。

 

㈱栃木レザーにしても

ブレターニャ社にしても、

通常、当店のような小さなお店のために

「特別(小ロット)製作」の

門戸を開いてくれることはありません。

 

しかし、

彼らの革の一番良い性質を表現できる

当店に対しては、どちらの会社も

少量であることをわかっていながら

請け負ってくれています。

ありがたいことです。

 

これからイタリアに出かけるのは、

この高耐水性革の本質を見極めるためです。

どのように作られているかを、

見せてもらってきます。

 

このひとつのオーダー品が

一枚の革の探求の旅に誘ってくれました。

ご注文に感謝申し上げます。