「A4サイズのカタログのような

厚い本を持ち歩いています。

それがぴったり入って

気持ちのいいサイズの

トートバッグが欲しいんです。」

 

正面

 

今回のキモは、

入れるものに合わせて

ぎりぎりの大きさで作って欲しい、

というリクエスト。

 

大きめで良ければ

さして難しいことはないのですが、

ぎりぎりでちょっとゆとりがある、

というリクエストは難易度Aです。

 

真正面

 

お好みのはっきりした方なので、

持ち手の形や

飾りでDカンを付けて欲しいという、

今までにお使いになったものの中から

ご自分の好きなものを

リクエストくださいました。

個性的なクライアントです。

 

背面

 

外ポケットに入るものも、

小さめのスマートフォンサイズから

大きめが入るように修正しました。

そういったものは

いつ大きさが変わるかわからないですから。

 

内側2

 

このクライアントのご趣味は、車。

5台の車をお持ちですが、

車のキーのサイズは、さまざまです。

それでキーポケットを5つお作りしました。

 

キーポケットの大きさは

どれがどこに入ってもいいように

統一しましたから、

慌てているときでも

さっと出し入れしていただけます。

そのうち、何番目が何、と

きっと決まってくると思います。

 

内側1

 

内側端にお付けした500ミリの

ペットボトル用ポケットは、

後から大きさが変更になりました。

 

「ペットボトルは

ホルダーに入れるので、xxセンチです。」

後からお電話をいただいたのですが、

こういった情報が必要なほど

内ポケットは

微妙なサイズでお作りしています。

 

キー用ポケット

 

キーポケットのフタは

開け閉めしやすいよう

ぱっと開くことのできる

タイプをご提案しています。

 

こんなご提案が

クライアントには喜んでいただけます。

いつも使う方の身になって

「イタコ式」コンサルティングをする

デザイナーならではのご提案。

 

最初どのようにまとめようかと思うほど

大変なリクエストでしたが、

お話しするうちにどんどん

まとまっていきました。

 

持ち手

 

 

こういうご注文をお受けしますと、

オートクチュールはまさに、

クライアントとデザイナーの合作だと

感じます。

すてきなコラボレーションを

ありがとうございました。

 

ところで、バッグにお付けしている

シルバーの金具は、このクライアント

お気に入りのアクセサリーです。

重さに負けないよう、本体に細工して

長くお使いいただけるようにしています。

こんなリクエストもお受けできます。


「現在使っている手帳カバーの

金具を再利用して

新しいカバーを作ることは可能ですか?」

メールでお尋ねをいただきました。

 

見本

 

H社の手帳カバーは

ちょっと変わっています。

H社製リング手帳を挟めるように、

独特の金具をセットしたカバーです。

中味を取り換えて使う

発想の手帳の中では、

おもしろいアプローチです。

 

金具

 

「手帳の中身は、私に合うものを

市販のリング手帳のなかから

見つけました。」

 

その手帳サイズをお知らせいただき、

ペンのサイズもご指定いただいて、

お作りしたのがお写真のお品。

 

内側

 

クライアントがお選びになったのは

印象的な赤のリザードです。

そして、手帳全体を留める

ベルトも、ご希望いただきました。

 

このような内容はすべて、

メールだけのやり取りで行っています。

 

外側

 

細かいご質問もたくさんしましたが、

即座にお返事いただき、

スムーズにご相談が進みました。

楽しいご相談をありがとうございます。

 

今頃は、だんだんと

リザードの持つ革のテリが

出始めているのではないかと思います。

末長くお使いいただけることを

心より願っています。


「今使っているものが

どうにも気に入らないので、

新しい財布を作りたいと思います。」

と、ご来店くださったクライアント。

 

外側

 

お話を伺っていきますと、

絶対これ、という

決め手になる仕様が特におありではなく、

なんとなくこんな感じかな

という内容が出てきました。

 

正面

 

別の角度からお話を進めて行きますと、

今お使いのお財布が

今まで使った中では一番良いのですが、

いろいろと気になるところがある

という話になりました。

 

背面

 

「今のお財布は厚いことと、

なんとなく滑りやすいことが

一番気になるのかもしれません。

それで、居心地の悪い感じなのです。」

 

この、なんとなくいやだ、という内容を

はっきりした言葉にすることができると、

解決方法が出てきます。

 

内側

 

ポイントが何なのか、

クライアントから引き出すのは

コンサルタントの役割。

 

どんな角度からお尋ねするかで

答えが得られないこともあり得る

微妙な問題です。

 

小銭入れ

 

また、感覚的なことは

人によって感覚自体が違ったり、

表現する言葉が違ったり、

初めて接する質問に対して

答えることができないこともあります。

 

それを引き出せるのが

コンサルタントの力。

想像力を駆使し

的確な言葉を探し

クライアントが腑に落ちる表現を

探して、形にしていきます。

 

マチ

 

今回お財布をお作りした後、

ご感想のメールをいただきました。

ご紹介させていただきます。

************

先月はベージュのクロコ型押しで、

左利き用の長財布をありがとうございました。

使い始めて1ヶ月強ですが、

快適に使用してます。

厚みは気になりませんし、バッグから

取り出す時に違和感なく掴めます。

やっぱり手触りが問題だったのかな

と感じます。

************

 

とても嬉しいご感想を

ありがとうございました。

また良いお品をお作りしたいと思います。


がま口を作れるようになったら、

立て続けのご注文をいただいています。

 

今日ご紹介するのは、

80代のお母様のために

お嬢様がご注文くださったがま口財布。

 

見本と並べて

 

「20年ほど前に買った財布で、

こんなぼろぼろになってしまいました。

がま口の大きさが小さいところが

一番気に入っているそうなので、

同じサイズで作っていただけませんか?

 

他の財布をいくつか買ったのですが、

結局満足できなくて困っています。」

 

見本品

 

とにかくがま口の場合、

ご希望にかなった種類の金具を

あらゆる方法でお探しします。

 

残念ながら今回のサイズはなかったので

「見本品から金具を外して

それをまた使ってもいいでしょうか?」

とお尋ねしたところ、

ご快諾いただけたので

下のお写真のようなことになりました。

 

金具を再利用

 

再生させて使える金具であれば、

今回のような対応ができます。

再生させられないものも

たまにあると思います。

何度も書きますが

がま口の場合、金具がポイント。

 

今回のご依頼者のお母様は

小柄で手の小さい方なので、

これより大きい財布は

使いにくく、つらいそうです。

 

同じ形

 

ご年配の方には

ルバルという柔らかい革でお作りし、

手触りを優しくします。

 

裏地も革を使うことで

使ううちにもっと手に馴染みますから、

どんどん愛着が湧く

手触りになって行きます。

 

外ポケット

 

外ポケットもあり、

使用者がどのように使っているかが

手に取るようにわかります。

 

さすが20年前のお品は

丁寧に作られていて、今では

こんなきちんとした製品には

お目にかかれないと思います。

 

内側

 

いろいろな製品価格が安くなったことで、

市場に出すことのできなくなった製品が

たくさんあることでしょう。

 

効率を重視することで

失われていった、

確かなものづくりの精神を

昔の製品からは感じることができます。

 

金具の使い方

 

もしみなさまが、これは

最高に使いやすい財布(バッグ)だ!

というものをお持ちでしたら、

どうか、ぼろぼろになっても

処分なさらないでください。

 

札入れ部

 

そして当店にお持込ください。

新しく、

そしてもっと使いやすく

改変してお作りすることができます。

 

厚み

 

お受け取り時に

クライアントが見せてくれた

喜びの表情が忘れられません。

ありがとうございました。


定番バッグも

お色を変えることでかなり

印象が変わります。

今日はそんなひと品のご紹介。

 

正面

 

たまたま作ってもらった

タシのグレーカラー。

いろいろなタイミングが合うと、

その時に限って作ってもらえる

お色があります。

それが、このグレー。

 

真正面

 

ショップ掲載のキャメルのギンコ

明るくてカジュアルな雰囲気ですが、

こちらはノーブルで

ちょっときちんとしたイメージになります。

 

側面

 

ご注文くださったのは、上品な若奥様。

いつもニュアンスのあるお色や

シックな服装を好んでらっしゃいます。

このクライアントにお持ちいただくと

ほんとに上品です。

 

パッチポケット

 

グレーというお色は

革に対しては定着の悪いお色なので、

うちのレシピの場合

薄いブラウンの上にグレーを載せます。

 

その結果

使っていくとブラウンとグレーの

中間のようなお色になります。

それはそれは微妙なお色。

 

ファスナーポケット

 

今回、形は定番そのままで

色だけを変えています。

内ポケットのファスナーも

しっかり上を向けてありますから、

使いやすさは抜群です。

 

タグ

 

じつはこのバッグは、プレゼント品。

「お任せするので、

鳥の絵を描いてもらえませんか?」

というリクエストにお応えして

絵のうまい職人が描いたのが

上のお写真のイラスト。

 

喜んでいただけて良かったです。

ありがとうございます。


ロックスターの風貌を持つ

きらきらと輝くようなクライアント。

見た目の持つイメージからはわからない

細やかなお気遣いをしてくださる方です。

 

外側

 

現在お持ちの長財布は

「お札の端が折れてしまうので

そうならないお財布を

作ってもらおうと思いました。」

 

このリクエストは

案外少なくないのですが、

これを解決するには、

いくつかの選択肢の中から

ご自分の考えや

使い方にあったものを

お選びいただくことになります。

 

内側

 

というわけで

出来上がったのがお写真の長財布。

外側の素材はコードバンで、

入手しづらいコニャックカラーです。

 

コードバンの価格は現在

3年ほど前の2.5倍くらいに

なりました。

 

札入れ詳細

 

エキゾチックレザー(牛革以外の希少革)

を取り巻く状況は

どんどん変転しています。

 

コードバンは馬の尻の革なのですが、

尻の部分だけの革なので

一枚があまり大きくありません。

 

ですから、鞄を作るときなど

左右の尻が繋がっている大きさの

革を、目いっぱい使います。

 

小物の場合、無駄がないように

左右どちらか片方の尻だけの革を

選んできます。

 

小銭入れ

 

近年、馬の革というと

コードバンしか売れない状況が

続いているとのことで、

他の革の分もこのコードバンに

載せて売るようになったということです。

 

加工の仕方にも

独自の難しさがある革ですから、

それは仕方のない状況でしょうか。

 

色を出すのも難しく、

濃いものはたくさんあるのですが、

今回の透明感のあるコニャックカラーは

もっとも珍重されているのに、

なかなか入荷できない状況です。

 

厚み

 

水染めで染めていますから、

お使いいただき手で撫でることで、

どんどん色濃いツヤが出てきます。

 

経年変化をする革は

この「水染め」という条件が必須。

 

それで当店では、牛革は独自の

水染めの革を作ってもらっています。

 

マチ

 

水染めの革は

芯がしっかりしていて

型が崩れにくい、という特性もあります。

おもしろいですね。

 

この長財布の革は

これからどんどん馴染んで行きます。

それでも型崩れなく使える、ということは

毎日気持良い手触りを楽しめるということ。

 

牛革でもコードバンでも、私たちの

五感を楽しませてくれる水染めの革に

ちょっとご注目ください。


イタリア製のクロコ型押しでお作りした

A5システム手帳。

何の説明もいらない、美しいひと品です。

 

お仕事で

これからの新しい局面に向けて、

新しい手帳を欲しいとお考えの

クライアントのためにお作りしました。

 

元NHKキャスターの福島さんは、

ご自身で朗読をするお仕事をしています。

また、個人の方へのボイストレーニングや

アナウンス講座もやってらっしゃいます。

 

個人個人が自分を表現するために

滑舌の良い話し方や表情の作り方など、

さまざまな内容を教えてくださる方。

http://ameblo.jp/katarinbo

 

当店には

アナウンサーのクライアントも多く、

そういう方からもお話を聞くことで

とても勉強になります。

いろいろなご職業のクライアントから

親しくお話を伺えることは、

この仕事の醍醐味のひとつ。

 

そしてそのお話から汲み取った感覚が

その方独自のオーダー品を

産んで行きます。

 

クロコ柄

 

さて、今回のお品の解説に入りましょう。

 

市販のお品ですと、

必ずと言っていいほど

革の表面に切り替えがあります。

 

それはデザインのように見えますが、

じつは革の取り都合を良くするための

大きな工夫です。

 

量産品にとって、一枚の革から

どれだけたくさんのパーツが取れるか

は、かなり重要な問題。

小さいパーツにするほど

取り都合は良くなっていきます。

 

外側

 

同じ理由から、

量産品を作るための革の表面には

きれいな厚化粧が施されています。

 

表面の傷や

皮膚下の組織の崩れが見えないように

表面をきれいにすることで、

ぐんと効率は上がり

何の瑕疵も見えないようになります。

 

そうすることで赤や黄色、青といった

きれいな色も出ますし、使っていっても

革表面の表情は変化しません。

 

内側

 

当店では

それとは正反対を目指し、革を

独自の品質に作ってもらっています。

 

そして

一枚一枚の革に即して、ナチュラルに

ほんとうにいい場所だけを

ひとつひとつのパーツに使っています。

 

こうした型押しの場合も

多少の表面の傷は避けますが、

基本は同じ。

 

金具が閉じている

 

でもこうした柄のある革に対しては、

クライアントのご希望や個性に合わせて

柄をお取りしています。

 

これがどこから見ても美しい秘密。

ずっと見続けて

見惚れていただきたい製品作りを

したいと思っています。

長くお使いいただくわけですから。

 

そういうことから普段は、長く使って

使い込んだ味の出る革を

素材として選んでいます。

当店定番の革ですと、

そうなるように作ってもらっています。

 

今回のイタリア製クロコ型押しは、

他社から買い付けたもので、

そういう意味でも

また品質においても変わった革。

最初からアンティークのようで

使い続けてもあまり変化はありませんが、

キズなどがいい感じの付き方をします。

 

普通の量産品に使われている革は、

表面の厚化粧が取れて

キズになった白い線状のものは、

元に戻ることはありません。

しかしこの革は、キズなのか

キズでないのかがわからなくなる、

そんな加工の革です。

この辺は、さすがのイタリア製。

 

金具を開く

 

仕立ての面でお話しますと、当店では

内側のリングの当たる場所には

革の内側に当てを付けて、

外に付けた場合のように、当て革が

邪魔にならないようにしています。

 

細かい話ですが、

快適に長くお使いいただけることを

常に考え、仕様も

常に進化させています。

 

それを考えることも

とても楽しいことです。

すてきなクライアントのみなさまを、

いろいろな角度から引き立てられる

革製品にしたい、と思います。


昨日は、クライアントひとりひとりの

オーダーメイドに対する

ご理解の違いから

価値観の違いが生まれ、

当店の見積もりに対して

高いか安いかの判断がなされる、

というお話をしました。

 

実際にどうご判断なさるかは

それぞれのクライアントに

お任せするとして、

お話の続きに戻りましょう。

 

ポケット

 

私どもは、価格の基本となる情報を

ここでみなさまにお知らせし、

それを共有していただくことで

コンサルティングを

よりスムーズなものにしたい

と考えています。

 

さまざまなクライアントがおいでなのは

承知しておりますが、

コンサルティング技術や製作技術、

出来上がったお品をもって

判断していただきたいと、

心より願っております。

 

ジャストサイズ

 

ではお見積もりの基準となるものは何か。

それはズバリ、製作時間です。

当店随一の職人が

その作業に当たる時、そのお品に

どれだけ時間がかかるかを

まず見積もるのです。

 

当店の職人は複数おりますが、

みな随一の職人ほど早くできませんから

実際の製作時間は

もっとずっとかかっています。

 

それでも、お見積もりの基準となるのは

その随一の職人が要する製作時間。

 

それがプロとして適正な時間であり、

各クライアントに対する公平だと

私たちは認識してます。

 

具体的なバッグの価格としては、

ワールドブランド品くらいの

お値段になることが多いでしょうか。

それよりお高くなることも

もちろんあります。

 

また、お財布などの小物でも

バッグくらいのお値段になることも

しばしばあります。

 

そういう理由から、

見積もり時間が大きくブレてしまうと

お店の経営そのものが危うくなりますから

最終的な見積もりをお出しするのに、

あらゆる問題点を勘案しつつ

具体的な完成品に至る

シュミレーションができるまで

クライアントと煮詰めていきます。

 

自立できる厚み

 

この仕事は、いわゆる手仕事です。

コンサルティングという頭脳仕事

(デスクワーク)も

もちろん必要ですが。

 

そもそも、ひとつひとつ

全く違うお品の注文を受け、その

それぞれをひとりの職人が仕上げる、

という作業内容に対して、何らかの

効率的なシステムを作ることは

可能でしょうか?

 

もちろんそれは、不可能です。

 

一般の製造会社が持っている、

販売専任や仕入れ専任の人員がいたり

経理や発送専任の人員がいたり、

製作も器械をフルに使い

流れ作業でどんどん進められる、

会社を丸ごと使った製造システムを

当てはめることは、不可能です。

 

そのため、製作数を増やすことで

そうしたさまざまな経費を賄っていく、

ということは、まったくできません。

 

言い換えれば、

量産の製造システムのように、

ひとりの人間に対して、

「能力x時間」以上の仕事を

できるようにするための

ルーティンを作ることができない、

ということ。

 

製作者が10人いても、

10人分に満たない仕事量しか

できないわけです

(一人前の職人になるには

10年以上かかりますから)。

 

一点だけを作るにしても、

一回でできる量産品の何百個分と

同じもしくはそれ以上の手間や

時間が掛かるということです。

 

そして、製作できる職人の育成には

先にお書きしたように

10年以上の月日が必要です。

 

なんと言っても、

製作アイテム数は無限なのですから。

 

以上のような理由から、量産品よりも

単価が高くなることは必然です。

 

しかも、小物だからと言って

短時間でできるわけではありません。

却って小物のお値段をお高く感じるのは

仕方ないことではと思います。

 

実際、上手にバッグを作る職人より

上手に小物を作る職人の方が、

ずっとずっと少ないのが現状です。

 

正面を開くと化粧品を収納できます

 

しかもこの仕事は、

多人数では完璧に行うことができません。

 

ひとつのお品ができるまでの間に、

関わる人が増えれば増えるほど

フルオーダーメイド品の出来上がりは

悪くなります。

伝言ゲームになってしまいますから。

 

カード入れ見開き

 

そんな超ローテクな仕事を

ご理解くださり、支えてくださるのが

当店のクライアントのみなさまです。

 

元々馬具を作ってきた革製品の

ワールドブランドにも、

実際そういうクライアントが

たくさんいました。

 

ヨーロッパの階級社会で、その昔

馬具を必要とした

アッパー階級の人々は

どれだけブランドを

支えてきたことでしょう。

結果的にそれがさまざまな技術を

残すこととなったのです。

 

内装2

 

それが、階級社会ではない日本において、

当店のような西欧的と言っていい存在が

長年続けてこられたというのは、

すばらしいことです。

あらためて皆さまに感謝いたします。

 

そして、このように小さなお店が

自社独自の素材を持っていることは、

㈱栃木レザーさんのご協力のおかげ。

早いもので、もう30年以上の

お付き合いになります。

 

ブランドと言えば、

まずは使っている素材を

自社独自に開発することが重要です。

品質が命ですから。

当店の牛革は、それに値する、と

胸を張って申し上げます。

 

小さな持ち手付き

 

イノベーションをいかに

続けたとしても

クライアントのご理解を得られずに

無くなってしまう職種やお店は

たくさんあります。

職人の手仕事は、その最たるもの。

 

ワールドブランドの

数あるアイテムの中で、

宝飾品を除けば、たいてい

一番高いものは、バッグや革製品です。

靴でも服でもなく、バッグや革製品。

 

それは、製作にあたって、

何種類もの別業種のプロが

必要とされるからです。

 

表と内側の素材づくりから始まって

多種の金具づくり、ファスナーづくり

芯材づくり…

すべてが、長い研究を必要とします。

 

オーバーナイトバッグ

 

フルオーダーメイドは、

そのひとつひとつのものを総て、

クライアントのひと品に

集中させることで、可能になる技。

 

だからこそ私たちは

HPのトップでこう申し上げています。

 

「オーソドキシーのすべてを

私のために」


今回は、多分

みなさまが一番知りたいと

思ってらっしゃる価格について

2回に分けてお話しします。

 

厚めの断面

 

今回このテーマを選んだ理由は、

クライアントのご希望をひと通り伺って

お見積もりをお出ししますと

 

1.思ったより安い

2.だいたい思ったとおり

3.想像よりもちょっと高い…

う~ん、注文するか迷う

4.想像よりもだんぜん高い、さようなら

 

という4つの反応を

すべていただくからです(笑)。

それぞれのクライアントが

何を基準としているかで、

まったく感じ方が違うのですね。

 

内側

 

1.2.の反応をいただいた中には、

過去、ワールド・ブランドのお店に

フルオーダーをしてみようと

ご相談に行かれた経験をお持ちの方も

けっこういらっしゃいます。

 

また、ネットなどで調べに調べて

どこも製作に応じてくれない事を知り、

「革製品のフルオーダーって

こんなに稀有なことなんだ。」

と思ってくださった方々も

数多くおいででです。

 

その他、たくさんのオーダー例をご覧になり

「これは相当、いろいろな

リクエストに応えてくれるようだ。」

と感じてくださる方々もいらっしゃいます。

 

フタ付き

 

その方たちは

ご希望のお品を探すことを通じて、

自分が考えているものを

現実に製作する(してもらう)ことが

いかに難しいかがよくわかった、

とおっしゃいます。

 

オーダーを受け付けるという

ブランド店を例にとりますと、まず

鞄などのご注文金額のスタートは

当店の何倍かのお値段で、しかも

ご本人が希望する内容について

「すべて可能です」と

言われることは、ほとんど無いようです。

 

じつはそれは、

日本人クライアントが希望する

内容の多くは、

欧米人のそれとはまったく違って

デザインだけでなく、

実際に使うこと、つまり

使い勝手に特化していること、

しかも軽量を望む場合が多い

というのが大きな理由です。

 

内側

 

この仕事を始めたころは、

キャリアを積むことで、どんどん

製作は楽になるだろうと思っていました。

しかし何十年経っても

こんなにも悩み、考えながら

作り続けなくてはならなくなるとは、

実際のところ

まったく想像もしませんでした。

 

これほど苦闘しながら

ひとつひとつを作り続けているのは、

当店のオーダーメイドを措いて

他にはありません。

 

いかにワールドブランド製品であっても

ショーウィンドウにあるものは

量産品に過ぎません。ですからすべて

出来上がりの形も決まっていますし

寸法も決まっています。

 

ということは、

機械的に事を運んでいけば

それこそあっという間に

世界中に届ける分が出来上がるわけです。

 

斜め

 

オール手縫いのエルメス社の

ケリーバッグですら、

一貫して組み立てられる職人であれば、

パーツを受け取ってから20~25時間で

縫い終わるという話を聞きました。

そして、たくさん出回っている時代には

工場でのライン生産をしていたようです

(今はどうか存じません)。

 

しかし当店では毎回、

好みも持ち物も全く違うクライアントに

ひとつひとつ違うものを製作しますし、

デザインだけでなく

使い易さを追求し、しかも

ある程度軽くあらねばなりません。

 

ボディバッグ全体

 

そのため、クライアントの個性と

オーダー品の最終形を理解している

ひとりの職人が、最初から最後まで

一貫して製作しています。

 

これほどの真剣勝負だけが

完璧なオーダー品に繋がるということを

ご理解いただけますでしょうか。

 

またクライアントは、ひとりひとり

違う体格で、違うご職業で、

体格が同じでも手の大きさは違いますし、

利き手も違う人がいます。

ファスナーを開ける時なども、

自然に開ける方向が違ったりします。

 

ということは、たとえ

同じデザインであったとしても、

当店ではひとりひとりの

クライアント情報に対応して

微妙に作りを変えて製作している、

ということを意味します。

 

オーダーメイド財布

 

もうひとつ欠かせぬ製作材料は、

クライアントは、お好みも十人十色。

いくら使い勝手が良くても、

気に入ったデザインでなくては

使いたい気持ちにはなれません。

 

「ほんとに

こんなに細かい希望まで聞いてくれて、

作ってもらうことができるんですね。

驚きました!」

こう言ってくださるクライアントは、

もちろん1.2.の

印象を持ってくださいます。

 

ジャバラ式カードポケット

 

では3.4.です。とりわけ

4.のご感想をお持ちになる方は

どんな理由からなのでしょう?

 

それは

何をどう作るかではなく、

値段だけで判断しがちな方、

物を作ることを簡単だと思っている方、

ひとつしか作らないので

せいぜいのところ

ちょい高めの市販品くらいのお値段だと

思っている方。

 

それから、当店が日常行っている

仕事の内容とレベルを見るのではなく、

ワールドブランドではないから、とか

個人のお店だから、巷によくある

趣味の延長品だろうと思い込んでる方、

 

また、当店のお品をご覧になっても、

安価な量産品や アマチュアの

手作り品と区別がつかない方、

などでしょうか。

 

多品種の品ぞろえをしているのが

通常のお店ですが、

そのお店で販売するものを総て

その場所で作っている、ということは

稀有なこと。

 

ですから、

普通のお店とはまったく違うのだと

思っていただきたい、と思います。

 

そんな角度からご覧いただきますと、

いろいろと興味深い点が

たくさんあるお店だとも思います。


「これが一番のお気に入りなので、

結局毎日、こればっかり持っています。

手入れも全然してないので、

メンテナンスと修理をお願いします。」

 

当店のお品を何点もお持ちくださっている

女性のクライアントです。

毎日お使いになるものが

このオーダー品ばかりになってします

という事実が、嬉しいですね。

 

洗浄処理

 

左がメンテナンス前、右が後のもの。

当初オーダーバッグに対するリクエストは

とにかく軽く作って欲しいということで、

かなり軽くする工夫をして

2010年にお作りしました。

 

小さいバッグであまり容量もないため

相当軽くお作りできましたが、

このバッグに関しては

思ってもいなかったことが起きました。

 

劣化

 

ハードカバーの本を入れて

お持ちになるとのことのですが、

その本の端が同じ場所に当たり、

それが毎日のことなので

3年ほどで本の端が当たる部分が切れてくる、

ということが起きたのです。

 

今回の修理箇所は、

ご希望いただいた細いショルダーベルトが

付け根の方から、そろそろ切れてきました。

これは、この細さであればこれくらいの寿命、

という感じでしょうか。

 

持ち手取替

 

今回の修理では、本体と持ち手との間に

金具を挟むことにしましたので、

同じ厚みの持ち手でも、長持ちします。

 

毎日使うことは、同じ革製品でも

靴だったら、まずあり得ないでしょう。

でも、バッグをそのように使う方は

たくさんいらっしゃいます。

 

高級ブランドが昔に製作したものが

一生ものであるのは、

自分の手では長時間持てないくらい重い

ということがあるからです。

また、それを毎日持つ方も少ないからです。

あのようなバッグを持つ方は

TPOに合わせて、必ず

いくつものバッグを持ち替えますから。

 

でも通常の日本の社会では、実際に

鞄を持ち替える必要のある場、というのも

あまりないのが事実です。

 

革バッグの寿命と丈夫さは

通常、革の重さに比例します。

どんな風にご自分のバッグを使うか、

どんな時にどのバッグを使うか、

それが、長持ちさせようと思ったら

重要なエレメントになります。

 

このクライアントは

新しいバッグをご注文くださいました。

このバッグと同じくらいの容量のものです。

 

これもひとつのバッグを

長持ちさせるためのすてきな解決策。

ありがとうございます。