2014.02.21
鹿革を使ったカメラバッグ
鹿が害獣として処分される量が、全国的に増えています。
このたび、ある地方から、
「新しい角度から、鹿革を使った製品を作ってください」
というご依頼を受けました。
鹿の革として有名なものは、メガネふき用の「セーム革」と、
「鹿の子の毛皮」でしょうか。
このたびご提供いただいた革は、いわゆる「表革」と
「ハラコの毛皮」でした。
鹿革の有名製品としては、山梨の「印伝」があります。
また、普通に出回っている製品イメージとしては、
インディアン風のざっくりしたバッグでしょうか。
すでに存在するものと同じものを作っても、
革加工の可能性が変わるものではないので、
当店では、最も材料を加工しない作りの
カメラバッグをご提案しました。
最も材料を加工しない作り、というのは
カットする部分も縫う部分も、必要最低限、という意味です。
なぜなら鹿革は、牛革と違って加工がひじょうに難しいから。
表革は、密度が高く、
製品として使っている分には伸びが少ないのですが、
パーツをカットするときは、びっくりするほど伸びます。
厚さも均一にしづらいので、縫いづらい場合もあります。
毛皮は、ヘタにカットしてしまうと、
鹿の子模様があるだけに、すごく唐突な感じになってしまいます。
ですから、上のお写真でおわかりいただけるように、
なるべく自然にデザインに溶け込むよう、
ほとんどそのままの形で、毛皮を使うことにしました。
革は、動物の種類によって それぞれの特質があります。
その特質を生かせるような作り方を目指すのが
理想的なのですが、時に、
これまで限定的なかたちで使用されてきた素材に対して
新たなアプローチを試みてみると、
なぜその革が、そうした使われ方をされるに至ったのか、
論理的に裏付けするような結果となります。
誰が、どうして、
鹿革を セーム革にして使ったり、印伝にしたり、
よくある インディアン風の製品にしてきたのかはわかりませんが、
真剣に革としての可能性を探っていくと、
なぜ現在のような使われ方になったのかは、
明白に説明することが出来るようになります。
その結果
当たり前のようなご提案をすることにはなるのですが、
論理的裏付けのしっかりした結論には価値がありますし、
単なる思いつきのような可能性を、ひとつひとつ潰すことで、
現実的な可能性を、きちんと追求して行くことができます。
今回のトライアルでは、
あらためてそうした行為の重要性を確認しました。
革の扱いも、革製品を作ることも、
きわめて論理的。
そうしたスタンスこそが、
ご満足いただけるフルオーダーメイド の下地となるのです。