実際のオーダー例
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ショルダー紐のオーダーがお高くなる理由
2025/10/28
たまたま最近
ショルダー紐のオーダー見積もりの
ご依頼をたくさんいただきました。
回答しているとよくわかるのが、
ただの紐なのにどうして高いの?と
お考えになる方が多いことです。
これまで当店のオーダー例では、
なぜベルトのオーダーがお高いのか
すでにご説明していますが、
ショルダー紐も同じ考え方なので、
再度ご説明しようと思います。
*オーダーの肩当て付きストラップ
まず最初に申し上げたいのは、
世間一般で販売されている
ショルダー紐はすべて
(他の革製品もそうですが)
安価に提供するために
量産された商品です。
とにかく最大限効率的に、
つまり材料や製作時間を、
徹底的に詰めている製品である
ということ。
幅や長さの選択肢がなくて当たり前、
高品質でなくても当たり前です。
幅や長さを統一するからこそ、
無駄なく製作できて、
安価に提供できるわけです。
基本、素材の革もお安いですし。
*牛革の1枚1枚は、こんな形
1枚の牛革はいびつな形をしてますが
ベルト用に用意した形・厚みの革を
同じ幅で
ベルト裁断機でカットするなら、
それこそあっという間に
効率よく、
何十本ものベルトができます。
ところがオーダーの場合、
ご希望内容に合わせて、
1枚の革のほぼ真ん中に近い所から
一本だけ裁断します。
ショルダー紐やベルトはたいてい、
かなりの長さを必要としますから。
これは当然、革のロスがものすごく
本来なら
大き目のバッグパーツを採れる場所を
無くすことに繋がります。
これがお高くなる理由のひとつです。
さらに、製作面での
ハードルがいくつもあります。
1本のベルトは、裁断機ではなく、
「手断ち」でカットされます。
想像してみてください。
細い幅であればあるほど、
カットは難しくなります。
また、ショルダー紐のデザインは
付けたいバッグのデザインによって
変わりますから、
バッグに付けるための製作方法も
変わります。
またコバ処理が必要なベルトでは
長ければ長いほど、
また幅が細いほど時間がかかります。
そんな丁寧に作らなくてもいいです、
とか、「本革」でなくても…
とかいうご希望もいただきますが、
1本だけ作る、という
技術のいるやっかいな仕事を
わざわざ引受ける合皮の製作者が
存在するでしょうか?
「合皮」は、安価に、大量に
提供することが前提の素材、つまり
製作に手間をかけたくない素材です。
それに、1本だけ作るための
製作ノウハウも持っていません。
世間にないからオーダーする、
という考えは良いと思います。
私たちもそれをお薦めしています。
しかし、ほんもののオーダーは
ある程度高価になってしまう、
とご理解いただき、
ご自分が求めるクォリティはどこか
追及していただくことは、
良い買い物には不可欠と思います。
また最近、「相見積もりを取ります」
という方もたまにおいでですが、
ほとんどの場合それは
価格に焦点を当てただけですから、
こちらもまた
どこまでクォリティをお求めなのか
自問していただくことで、
ご自分の時間とお気持ちを
大切にすることができると思います。
7年後のリネアペッレレザーのトートバックと新しいクラッチバッグ
2025/10/26
多くのご注文をくださっている
クライアントが、本日のバッグを
お見せくださいました。
*左は7年前のリネアペッレレザー
右は今年のリネアペッレレザー。
どちらの存在感もすばらしい。
ふたつのすばらしい
クロコダイルの型押し革は、
パッと見てお分かりのとおり
リネアペッレレザーの逸品です。
左は全体がブラックの型押しですが、
型押しのライン部分に
シックなブルーを入れ込んで、
迫力ある印象的な革です。
*出来上がり時のお写真。
シンメトリー柄を取り、見事です。
リネアペッレレザーは
毎シーズン変わり、
同じものは二度と作られません。
こちらは、この時の最高の革でした。
この年はデザイナーにとって
リネアペッレの当たり年で、
すばらしい作品ばかりを
生み出すことができ、
それはそれは幸せな年でした。
どうやってこの革を作ったのか、
どうして翌年も作らないのか、、、
いろいろろ思いはありますが、
このように稀有な革をご理解くださる
クライアントの存在が、当店の仕事を
よりおもしろくしてくださいます。
ありがたいことです。
使えるものを差し上げたいですから、
お話をよく伺って
デザインに結び付けていきます。
一点一点が
お持ちになる人の個性を反映します。
そうして、7年という年月が経って
革の経年変化を拝見できることは、
最高に嬉しいことです。
右のレッドxブラックの
今年のリネアペッレレザーは、
どんなふうに年経るでしょう?
それを想像しますと、
またお訪ねいただける時が
とても楽しみです。
いつもご理解を
ありがとうございます。
二個目のベルトポケット、あるいはウエストポーチ 50807
2025/10/24
「あ、これで
スマホのサイズが変わっても
このバッグで行けます、良かった!」
お引き取りの際に
新しいスマホサイズのシェルを入れて
ご確認いただいた時のご感想です。
私たちも安心しました。
以前お作りしたベルトポケットを
新しいスマホのサイズに合わせて
ご注文くださったクライアント。
一代目は
大事に使ってくださっているようで、
2年ほどお使いいただいてますが
白い革にもかかわらず、きれいです。
下のお写真が、毎日で2年後の姿。
デザイナーが少し磨くと、
もっときれいにさっぱりしました。
「写真を撮ればよかった…」
余談ですが、ウェブショップの
サコッシュはこれと同じ革です。
みなさま、白というとすごく汚れると
おっしゃいますが、革によって
そこはかなり違います。
*2年後の姿。バシバシ使っています。
下のお写真は、新しい方の
スマホの入り具合を撮りました。
気持ちいい入り具合です。
ファスナー布のブルーも前回と同じで
ご注文いただきましたから、
こんなに気に入っていただけて
とても嬉しいです。
ほんのちょっとした遊び心が
毎日を楽しくしてくれますし、
「これは自分のもの」という意識や
「日常で変わらぬもの」という
安定した気持ちを持てる
きっかけになります。
ステキなことです。
今回は、ご依頼者に
どんなお仕事をなさっているか
お尋ねしましたら、
やはり技術のお仕事でした。
しっかりしたお仕事をなさっている、
そんな雰囲気が伝わってきます。
おもしろいもので、
お目にかかってお話を伺うだけで
どれほどの仕事をなさる方か、
よくわかります。
前回の記事でお書きしたように、
このようなワイルド系の作り方は
私たちはあまりしませんが、
うちでお作りしますと、
ちょっと違うワイルド系になります。
それがおもしろいところで、
例え同じ作り方をしても、
まったく違うイメージになるのが
製作者=ブランドの個性。
*まったく同じに作った前回より
今回はエレガントにしました。
出したいイメージが
デザイナーによって
統一されているからです。
どんなに驚くような、当店からすると
規格外れのご希望品であっても、
出来上がると当店カラーになるのは
そうしたディテールから来ます。
全体のイメージを変えるのは
ディテールですが、
ディテールばかりにこだわるだけでは
全体像に統一感は出ません。
矛盾してますが、
デザインとはそういうものです。
このクライアントには
このデザインを喜んでいただけて
ほんとに良かったです。
このたびもありがとうございました。
リネアペッレレザーのポーチのような長財布 50906
2025/10/22
「こんな使い方をしてらっしゃる!」
デザイナーは
「目から鱗が落ちました。」と
言っていました。
「単純にポーチかと思ったら、
ポーチなんだけど、長財布でした。」
フルオーダーメイドをしていると、
案外こうしたシンプルな使い方が
すっぽりと抜けることもあります。
いやはや。
*表裏で革の型押しを替えています。
こちらはワニ中央柄のシンメトリー。
華やかなクライアントが
気に入った革は、
レッドxブラックのきらきらした
リネアペッレレザーでした。
デザイナーは
この方にはこれでしょう、と、
数ある革の中から
一番最初にお見せした革です。
お見せする順番はさておき、
ほとんどのご依頼者が
デザイナーの予想した革になります。
お似合いになりますから。
*こちらはワニ脇腹柄のシンメトリー。
赤x黒の色の出方も計算しています。
出来上がり時、「まあ、すてき!
思った以上の出来です!」と。
良かったです。
思った以上、をいただけました。
1枚の革の状態で見ただけで
出来上がりの想像がつく人は
ほとんどいらっしゃらないでしょうが
デザイナーの頭の中には
みなさまに革をお見せした段階で
「ほぼ形は完成してるのよ。」
だそうです。
*お札が20枚ほど入るヨコ幅。
「その完成形に近づけていくのが
製作作業なのね。ところが、
作るうえで、あらっ、という
技術的な齟齬が出ることもあれば、
金具が見つからなかったり、という
アクシデントもあったりします。
そんな数々の苦難を乗り越えて
やっぱり目指した完成形に持ってく
「力技」が、
フルオーダー製作には一番重要よ。
とにかくあきらめない!
一番すてきなものを作る!って。」
*シンプルな形ですが、この革は…
「だからね、
登頂を妨げる艱難辛苦に
どう対応していくか、だけが
勝負と言っても過言でありません。
作る人にとって、
すべての材料が揃って、
作り方に何の謎の部分もなく、
考えなくても作れるのが、量産品。
すでに決まったデザインの
セミオーダー品も同様です。
でも、フルオーダー品は
そんなわけにいきません。
すべてのお品が
実際に存在しないものですし、
注文の作り方に向いてない革での
製作もあれば、
リネアペッレレザーなんて、
糊がつかなかったり、
薄く漉けなかったり、なんてザラで
もうどうすればいいのよ、
なんてのばっかりです。
でもうつくしい革だから作りたいし、
うつくしい形を
その革に見せてあげたいし、
それを差し上げることで、
ご注文者に喜んでいただきたいの。
だからたくさん考え、
無駄なく試すんです。」
*きゃしゃで長めのタッセルが
大胆な柄とミスマッチしています。
そんなこんなで、
この長財布として使われるポーチも
すばらしい出来でした。
深い型押し、表面加工ばっちり、
型押しが複雑、と何十苦でしたが、
出来上がってみると
製作苦労の見えないものとなりました。
クライアントは、
「プレゼントの手帳カバーは
はっきり言ってお安いな、
と思いました。
でもこのポーチはシンプルだから、
少しお高いな、と思ったんですよ。
でもそうですか、こっちの革の方が
作るのが大変なんだ…なるほど。
ありがとうございました。」
いえいえ、
こちらこそありがとうございました。
プレゼントの3代目の手帳カバー 50906
2025/10/20
大切な方へのプレゼントとして
ご依頼いただいた手帳カバーの
3代目です。
とても気に入っているカバーだけど
そろそろ人生最後の手帳になるから…
という相手の方のつぶやきに
お応えしたご注文。
長いお付き合いがあって、
このようなプレゼントをしたい方が
いらっしゃるのは、
とてもすばらしいことと思います。
人生の宝ですね。
ご注文当日は
相手の方をお連れくださいましたので
たくさんの革をお見せしたのち、
お使いになるご本人に
お色をお決めいただきました。
こうして下の4枚のお写真
過去2代のカバーを見ますと、
好みが一貫している、とわかります。
はい、
このブログをお読みの方々なら
ご想像がついてらっしゃるように、
ご使用者は男性です。
今回、他のお色にも目が行きましたが、
やはり気になるのはブラックxブルー。
最終的にお選びになったのは、
エルメス社の革です。
*2013年 初めての手帳カバー。このブルーは
当店オリジナルレザーのフォルテでした。
*2021年2冊目のカバー。このブルーは
イタリア製のトスカーナブルー。
ふたつ目のカバーをお作りする時も
まだひとつ目は
十分使える状況でしたが、
さまざまな意味や状況で、
替え時というのはあるものです。
今回はまだ
それほどお使いでありませんが、
「そろそろこれで最後かな…」が
「とりかえばや」になりました。
*裏面も表と同じベルトのイメージ。
*コントラストのきれいな内側。
出来上がり時、おいでになったのは
プレゼントするご依頼者だけです。
「とても楽しみにしてらっしゃるので
きっと喜んでくれると思います。
出来上がり日をお尋ねされるくらい
だったんですよ!」
嬉しいですね。
「このブルーがとてもきれい。
この前たくさんの革を見せていただき
それも楽しかったようです。」
デザイナーはいつも言っています。
「お買い物って、楽しいでしょ!
こうして相談できるオーダー方法だと
欲しいものが手に入って最高。だけど
それ以上に、相談する時だけでなく
待ってる時もずっと楽しく思えるって
最高のお買い物方法だと思う。」
*こうして底から見てもうつくしい。
いつおいでくださる時も
艶やかなこのたびのご依頼者は、
今日もステキな装いです。
「ところで
私のお財布はどうなった?」
「これは、お似合いになりますよ!」
顔を見合わせてニッコリしている
クライアントとデザイナーでした。
次回、こちらもご紹介します。
大切なプレゼントを
ずっとお任せくださって
ありがとうございます。






























