2015.04.1
革の仕上がりのバラつきはなぜ起こる?
今日は、革について書いてみようと思います。
革一枚一枚の
出来上がりのバラつきについて
たまたまお客様からお尋ねいただきました。
当店で使っている革は、
原皮が北米などから日本に輸入され
それを国内で鞣して
染色しているものがほとんど。
牛でも豚でもリザードでもなんでもいいですが、
革の出来上がりがバラつくのには
いろいろな理由があります。
ちなみに当店では、1枚の革の中でも
なるべく肌理の揃った部分を使って
パーツを取る努力をしています。
上のお写真は
シュリンク(自然にシワの寄る薬剤を使った鞣し方)
の革の、きれいな部分を使った長財布です。
************
1.原皮のバラつきによる、キズや肌理の違い
まずひとつの原因は、
1頭1頭の個体差、これに尽きます。
家畜とはいえ、外で生活をしていますから
彼らの表面のキズは、それぞれまったく異なります。
下のお写真は、とても質のいい部分にある
痛恨のキズ!
また、肌理の細かいものもいれば
粗いものもいるのは、自然の道理です。
1枚の革の中でも、場所によって肌理は違います。
下のお写真をご覧ください。
キップやカーフなどの若い牛が喜ばれるのは、
人の肌と同じで
若い方が肌の肌理が細かく、柔らかいから。
その分キズはつきやすいので
気をつけて使う必要はありますが。
2.色の違い
革の色の出具合は
それぞれのロットによって、変わってきます。
ロットと言うのは
一回で作る枚数の「ひとまとめ」を指す言葉。
例えば当店のタシですと
10~15枚が1ロットで作られます。
色の配合が同じなのに、
ひとつひとつのロットによって色が違ってくるのは
とても不思議、と思われるかもしれません。
しかし、計算し尽くせない気温や湿度の取り合わせや
日々、また季節によってコンディションが変化する水や油
などなど、すべての環境が同じ日は一日とてありませんから
厳密に考えれば、それは当然のことと言えます。
同じ染色材を、同じ容量の同混合溶剤で溶いて、
ストップウォッチを使ったり
タイコを回す回転率と回数を同じにしたとしても、
やっぱり毎回、色の出方は違ってしまいます。
そういう意味で言いますと、革という素材との遭遇は、
まさに一期一会、と言えるかもしれません。
ご自分の好きな色に出会ったら
お求めになるといいと思います。
また、革の表面を覆ってしまう加工を施すならば
おそらく、ほぼ同じ色を出すことはできますが、
そうした加工をしないで作られた
本来の革らしさを持った革においては
完全に同じ色を作ることができない、
ということを、ぜひお見知り置きください。
どの革がいいとか悪い、ということではありません。
自分が革という素材に何を求めているのか
きちんと理解して頂くことが、
楽しい革ライフにつながります。