2016.03.29
見本あり長財布のフルオーダーメイド
本日ご紹介するのは、長財布。
今までお作りした中で
一二を争う、珍しい形です。
どんなに長くお店をやっていても
見たことのないお品は
まだまだたくさんある、と思ったご注文です。
ぱっと見は、ファスナー長財布に
外ポケットがついたタイプのようです。
こちらのお財布は、
だいぶ前にお求めになったという見本品を
元にして、改変を加えました。
ところがこの外ポケットが曲者(笑)!
中には薄いカード入れがたくさんついていて、
「これはいったい革でお作りできるかしら?」
最初に思ったことがこれです。
見本品のカード入れは布でできていますから、
裏の始末をする必要がありません。
ところが革の場合、裏の始末が必要になり、
これが、素材が違うと表現が違ってくるところ。
このお財布、
たくさんの要素がてんこ盛りで
外ポケットもついています。
ただ、見本のポケットは深さが
今一つ使いにくそうでしたので、
それも改変しています。
たいていの見本品は、ひと目見ると
デザイナーにはほとんどの問題点が
わかります。
内側の仕様についてお尋ねしますと
クライアントは、すべての問題に
的確に答えてくださる方でした。
案外毎日使っている道具というのは
持ち主は、見ているようで
あまり見ていないことが多いです。
これは当然のことですが、
質問をぶつけると、たいていの方が
記憶をたどってくださいます。
その記憶と手の扱い感を頼りに
一人一人の使い方の癖を探るのが
コンサルティングの妙です。
今回のお財布は
もちろんたった一点だけお作りするのですが、
そんな時でも
下のようなダミー品を作ります。
ほんの少しの厚みで
全体の出来上がり感は全く違います。
このダミーを作ることは、もっとも重要なこと。
これをいかに作るかが、腕の見せ所です。
先日、ほかのクライアントとお話しましたら、
幾か所かの職人にお尋ねしたところ
「まず見本品を作りましょう(有料です)。
それを修正して二つ目を作り(もちろん有料)、
三つ目ならば完璧なオーダー品ができると思います。」
と言われたそうです。
これは、某有名ブランドが
オーダー時に言っていることと同じなのですが、
出だしが違っていたら
たとえ三つ目でも、完璧にはなりません。
出だしは
きちんとしたコンサルティングです。
これだけが
クライアントの「満足」に辿り着く道の
入り口です。