2017.02.17
あるレディスショルダーバッグ、一点ものの行方
ウェブショップにお出ししてる一点ものは
たまたまその時見つけた革などで、
これは!というデザインを思いつくと
お作りしているお品です。
ですから、お出ししているお品の
ほとんどは、
世界でたった一点だけのもの。
それを作った時点で革がお終いになったり、
どうしても作ってみたかった形なので
製作に時間がかかるものであっても
採算度外視で作ったり、と
結構チャレンジングなお品が多く並んでいます。
当店はフルオーダーメイドが主ですから、
オリジナルでお作りしたものに関しては、
クライアントがついているお品に比べて
価格をお安く設定しています。
こうして
常に新しいチャレンジをすることで、
新しい視点や新しい技術、
新しい発想を形にする方法を
ブラッシュアップしているのです。
ですから、レディスあり、メンズあり
お財布あり・・・と様々なアイテムを
意図的に企画し、製作しています。
オーソドキシーの技術の範囲を表しています。
もしかりに当店が
右から左へ商品を仕入れて売るお店なら、
これだけのアイテムを並べることは容易です。
しかし、これらをすべて
銀座のアトリエのみで作っているという事実は
かなり稀有なこと、と自負します。
以前書いたように、それぞれのアイテムは
製作ノウハウが違うため、普通ならば、
バッグ職人には、お財布を作ることは
できないからです。
他のアイテムに関しても、然り。
また、たったひとつのお品を
たった一人のクライアントのために作る、
これこそが貴重なことです。
なぜなら、量産品の見本品を作るのと違って、
たった一点のために
デザインだけでなく、使い勝手に至るまでの
すべてを完成させるからです。
量産品なら、そこまでのことはしませんし、
もっと単純な製品を作るための
型紙等のサンプル製作代は、もともとお安く、
しかも、作った数で割ることができます。
こういった事情は、
オートクチュール製品が高価になる
大きな理由のひとつになっています。
今回お写真でお見せしているこのバッグ、
ぜひウェブページでご覧ください。
あらあら?なんだか雰囲気が違う?
とお感じの方は、良い目を持っています。
じつは、大きさを変えているんですよ。
これを見においでくださったクライアントは、
「いい革の柄で、一目で気に入りました。」
とおっしゃったのですが、
「でももう私はA4サイズは持たないので、
横長にして、もっと小さくならないかしら?」
というリクエストをお出しになりました。
もしまだ革があれば
新しいものをお作りするところですが、
もうこれでお終いですから、
現在あるものの横幅は変えずに
高さをカットするご提案をしました。
リフォームを施したわけです。
幸い背の高いクライアントなので、
このくらいの横幅がある方が
バランスは良い感じです。
また、肩掛けでお使いになるので、
そうするとこの持ち手の間隔は
かなり肩に掛けやすいサイズ。
こういった部分をそのまま残したまま
リフォームをする必要があります。
それで完成させたものが、このお写真です。
まったく雰囲気が違いますね。
以前のA4が入るサイズに比べると
アヴァンギャルドな雰囲気が増しています。
こんなリクエストの時、
具体的にどんな風に高さをカットするかは
職人によって考え方が違います。
今回はフタの模様がポイントなので、
それを生かす方法を採りました。
クライアントには、喜んでいただきました。
こうして、その方にとって
長くお持ちいただけるお品に
変わったことは、嬉しいことです。
ありがとうございました。