2017.05.6
当店革製品のオーダーメイド、価格について その1
今回は、多分
みなさまが一番知りたいと
思ってらっしゃる価格について
2回に分けてお話しします。
今回このテーマを選んだ理由は、
クライアントのご希望をひと通り伺って
お見積もりをお出ししますと
1.思ったより安い
2.だいたい思ったとおり
3.想像よりもちょっと高い…
う~ん、注文するか迷う
4.想像よりもだんぜん高い、さようなら
という4つの反応を
すべていただくからです(笑)。
それぞれのクライアントが
何を基準としているかで、
まったく感じ方が違うのですね。
1.2.の反応をいただいた中には、
過去、ワールド・ブランドのお店に
フルオーダーをしてみようと
ご相談に行かれた経験をお持ちの方も
けっこういらっしゃいます。
また、ネットなどで調べに調べて
どこも製作に応じてくれない事を知り、
「革製品のフルオーダーって
こんなに稀有なことなんだ。」
と思ってくださった方々も
数多くおいででです。
その他、たくさんのオーダー例をご覧になり
「これは相当、いろいろな
リクエストに応えてくれるようだ。」
と感じてくださる方々もいらっしゃいます。
その方たちは
ご希望のお品を探すことを通じて、
自分が考えているものを
現実に製作する(してもらう)ことが
いかに難しいかがよくわかった、
とおっしゃいます。
オーダーを受け付けるという
ブランド店を例にとりますと、まず
鞄などのご注文金額のスタートは
当店の何倍かのお値段で、しかも
ご本人が希望する内容について
「すべて可能です」と
言われることは、ほとんど無いようです。
じつはそれは、
日本人クライアントが希望する
内容の多くは、
欧米人のそれとはまったく違って
デザインだけでなく、
実際に使うこと、つまり
使い勝手に特化していること、
しかも軽量を望む場合が多い
というのが大きな理由です。
この仕事を始めたころは、
キャリアを積むことで、どんどん
製作は楽になるだろうと思っていました。
しかし何十年経っても
こんなにも悩み、考えながら
作り続けなくてはならなくなるとは、
実際のところ
まったく想像もしませんでした。
これほど苦闘しながら
ひとつひとつを作り続けているのは、
当店のオーダーメイドを措いて
他にはありません。
いかにワールドブランド製品であっても
ショーウィンドウにあるものは
量産品に過ぎません。ですからすべて
出来上がりの形も決まっていますし
寸法も決まっています。
ということは、
機械的に事を運んでいけば
それこそあっという間に
世界中に届ける分が出来上がるわけです。
オール手縫いのエルメス社の
ケリーバッグですら、
一貫して組み立てられる職人であれば、
パーツを受け取ってから20~25時間で
縫い終わるという話を聞きました。
そして、たくさん出回っている時代には
工場でのライン生産をしていたようです
(今はどうか存じません)。
しかし当店では毎回、
好みも持ち物も全く違うクライアントに
ひとつひとつ違うものを製作しますし、
デザインだけでなく
使い易さを追求し、しかも
ある程度軽くあらねばなりません。
そのため、クライアントの個性と
オーダー品の最終形を理解している
ひとりの職人が、最初から最後まで
一貫して製作しています。
これほどの真剣勝負だけが
完璧なオーダー品に繋がるということを
ご理解いただけますでしょうか。
またクライアントは、ひとりひとり
違う体格で、違うご職業で、
体格が同じでも手の大きさは違いますし、
利き手も違う人がいます。
ファスナーを開ける時なども、
自然に開ける方向が違ったりします。
ということは、たとえ
同じデザインであったとしても、
当店ではひとりひとりの
クライアント情報に対応して
微妙に作りを変えて製作している、
ということを意味します。
もうひとつ欠かせぬ製作材料は、
クライアントは、お好みも十人十色。
いくら使い勝手が良くても、
気に入ったデザインでなくては
使いたい気持ちにはなれません。
「ほんとに
こんなに細かい希望まで聞いてくれて、
作ってもらうことができるんですね。
驚きました!」
こう言ってくださるクライアントは、
もちろん1.2.の
印象を持ってくださいます。
では3.4.です。とりわけ
4.のご感想をお持ちになる方は
どんな理由からなのでしょう?
それは
何をどう作るかではなく、
値段だけで判断しがちな方、
物を作ることを簡単だと思っている方、
ひとつしか作らないので
せいぜいのところ
ちょい高めの市販品くらいのお値段だと
思っている方。
それから、当店が日常行っている
仕事の内容とレベルを見るのではなく、
ワールドブランドではないから、とか
個人のお店だから、巷によくある
趣味の延長品だろうと思い込んでる方、
また、当店のお品をご覧になっても、
安価な量産品や アマチュアの
手作り品と区別がつかない方、
などでしょうか。
多品種の品ぞろえをしているのが
通常のお店ですが、
そのお店で販売するものを総て
その場所で作っている、ということは
稀有なこと。
ですから、
普通のお店とはまったく違うのだと
思っていただきたい、と思います。
そんな角度からご覧いただきますと、
いろいろと興味深い点が
たくさんあるお店だとも思います。