2017.11.12
ショルダーバッグのオーダーメイド
「どうしてもこのバッグと同じ色で
同じデザインのものが欲しくて…
以前他店で相談した時、
同じ革の色を探すのは難しいと
言われたので、自分で革を探しました。
2年かかってやっと
思い通りの色を見つけました。
この革を使って
ちょっとだけデザインを変えて、
少しだけ小さくして
作ってもらえますか?」
情熱あるクライアントは、
自分の理想の色の革を
2年かけてお探しになりました。
その革を持って
最初に話をした他店に赴いたところ、
大雑把な感じで
「同じものを作ればいいんでしょう。」
という応対をされて、
話をあまり聞いてくれず、
望んだとおりにできるかどうか
心配になってしまったとのことです。
上のお写真が、合皮素材で作られた
見本のバッグ。
「大切にして
なるべく使わなかったんですが、
ある時クロゼットを開けたら
ぼろぼろになっていて
すごくショックでした。」
合皮の寿命はやはり短いですから、
使っても使わなくても
あまり保つことなく劣化します。
革はそういうことがないかというと…
染色や鞣しの仕方によっては
合皮のようにぽろぽろと
表面が崩れていってしまうものもあります。
しかし「その時」がいつ訪れるかは、
革の作り方によって千差万別なので
それは、神のみぞ知る、です。
素材が違えば、同じ型紙で作っても
見えるラインはかなり変わります。
ですから、どこのどういうラインが
気に入っているところなのか、
細かく聞き取りをします。
なぜこのバッグをわざわざ
革で再生したいか、という理由ですね。
その理由を
ひとつひとつ細かく分析していきます。
そうしたうえで、
素材が違うものをどうやって
同じイメージに見えるかを、
技術的に解明して行きます。
この時にやっていることは
科学的に思えるかもしれませんが、
実際は、かなり感覚的な作業です。
手に染みついた感覚、や
頭の中で瞬時にして浮かぶ直感、
というものは、長年に渡って
あまたの品数の製作に携わることでしか、
身に付けることはできません。
通常の材料で、
ルーティーンのお品や
飛躍のないお品を作るには、
そういった感覚は
まったく必要ないでしょう。
でも
フルオーダーメイドの製作には、
そのような特別な訓練に基づく
技術が必要です。
クライアントに買っていただくのは、
そうした特別な技術を持つまでに至った
職人のそれまでの時間のすべてです。
「うわあ、そっくりです!
思った通りに出来上がってる。」
最高の賛辞をいただきました。
ありがとうございます。