革製品のオーダーメイド 銀座 オーソドキシー

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2018.08.2

何でも入る、小さなファスナー財布 1711

もしもこの仕事を百年やったら、

クライアントが持ち込む見本すべてを

「これは見たことがあります」と言える

状況になるでしょうか?

 

それは絶対に無理でしょう。

今回お持ち込みいただいた財布も、

こんなアプローチの仕方は初めて、

という小さなファスナー財布です。

 

 

とにかくサイズが小さく、

その割には小銭も取り出しやすい

変わった作りのお財布は、

いったいいつ

どれくらいの数が作られ、

どれくらいの人が

ここまで長くご愛用なさっているでしょう?

かなりロマンあふれる想像です。

 

あなたがいま愛用しているお品は

どこかで誰かが考案し、製造され、

世界中で、1000人くらいの人が

同じものを持っている…

 

 

今回、これをご愛用のクライアントが

こうしてご注文くださったわけですが、

とりあえず札でも小銭でもカードでも

何でも入ってしまい、

それぞれ出し入れしやすくできているのが

すばらしい、と感心しました。

 

内側に、小銭入れのフタを留める

留め具などが一切ないところも、

注目すべき点です。

 

このように無駄のない作りは、

まさに正真正銘

民芸に通ずる心意気です。

 

 

そして、開けると同時に

すべてのものを見通すことができます。

どれだけ使いやすさを考えたものかが

伝わってきます。

 

私が、昔のモノづくりはすばらしい、

とよく書くのは、こうした意味からです。

 

必要に応じたデザインを考える、

というのは、新しいアイデアの元、

引き出しを持っている、ということ。

ひとつのアイデアではなく、むしろ

アイデアの核となる魂を持っている

というべきでしょうか。

 

 

こうしたお品に出会いますと、

早く、安く、

だめになったら買い替えればいいや、

という思いで作られているものとは

対極なので、

身の回り品が尊いものであった

良き時代が感じられます。

 

そういったお品が

当たり前に存在した当時には

見えなかったことが

わかるようになるには、それなり

時代を経なければなりません。

 

私どもは

こうしたお品に込められた

「気持ちよく使ってほしい」という

気持ちを、大切に

オーダーメイドに

引き継いでまいりたいと思います。

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