2021.02.9
栃木レザー㈱の牛革の作り方
先日、久しぶりに
栃木レザー㈱をお訪ねしました。
みなさまに改めて、
栃木レザー㈱がどんなに丁寧に
革を作ってくれているかを
お話ししようと思います。
当店の革を一色 作っていただくのに
かかる時間は、ひと月半~ふた月。
時間をかけることでのみ、
使っていった時 経年変化の良い革に
作り上げることが出来ます。
上が、北米から届いた原皮の状態。
きつい塩漬けになって、1袋に
30~40枚入っています。
この段階では皮に毛も脂もついています。
最初に塩抜きするために、
ドラムを流水で一晩回します。
ひとつのドラムに1袋弱が入ります。
「鞣す」とは、この毛も脂も取り去って
皮から革にする作業のこと。
複数の石灰等の混合液ピットの中を
ひとつひとつずらしながら、
様子を見ながら1週間
皮の毛を緩やかに動かして行きます。
それを水洗いすると毛が抜け、
下の写真のように水を含んで
ぶるぶるとした厚い皮になります。
それを別のピット列に入れ、
同じように複数のピットを移した後
水洗いをすることで、脂肪を取り去り
皮の下部のコラーゲン層を除去します。
水を含んだ皮はとても重く、
それを一枚一枚丁寧に、手で
端処理をして行きますから、
大変な重労働。
水を含んだ重い皮は
端処理の後、ざっとした水切り作業に入り、
その後 下の写真のように
一枚一枚を乾かす段階に入ります。
一枚一枚、革の端の適度な場所に穴を開け、
麻ひもを括り付け、木の棒から吊るします。
これもすべて手作業。
慣れているとはいえ、大変な細かい作業です。
重い皮を上まで持ち上げて、吊るします。
見事に、きれいに吊るされていますが、
この作業も熟練しないとできないこと。
皮が乾いたら、ここからが「革」となります。
上のお写真は、革に
ドラム染色を施している所。
たっぷりの水と適量の脂・染料を入れて
ドラムで回すことで、
革の下地になる色を染めます。
脂を入れることで、
革の繊維に強さとしなやかさが出ます。
どんな革にしたいのか、という
最終的な目標があるからこそ、
日々考え、試している薬剤たちが
日光からの井戸水に合っているのか、
目的の革を作るにふさわしいもので、
その順番が適当であるかを
見極められます。
どんなモノでも、
「作り上げる」人たちには
「こんなxxにしたい!」
という目標があります。
上のお写真は、
ドラム染めが終わった革たちです。
色ごとにドラムを変えますから、
どれくらいの仕事量になるでしょう?
ありがたいことです。
こうして出来上がった革は
目的に応じて、目指した柔らかさに
加工されていきます。
柔らかくする方法も、さまざま。
クライアントの希望に応じて、
合わせ技を使うこともあるとのことです。
そして最後に、
オーダーされた色にするよう
手作業で色を整えて、仕上げられます。
これも、誰もができるというわけではない、
難しい作業です。
この最後の仕上げ段階で、
使っていっての経年変化が決まります。
顔料を使うレシピのオーダーは、
出来上がった表面はきれいに輝きますが、
経年変化はあまりしなくなります。
当店の特製牛革には、顔料を使いません。
だからマットな仕上がりの革になります。
それを使うことで、
どんどん変化して育ってくれるところが
おもしろいところと思っています。
それが当店の目指す革の在り方で、
ここが他社の革と一番違うところ。
製作物はなんでも、
作る人の目標を示しています。
共感できるすばらしい作り手たちに
乾杯したいと思います。