2021.06.23
端処理の特別なオレンジの長財布 104
あざやかなオレンジの長財布を
ご紹介します。
この革はH社の革で
最近入手するようになった革ですが、
発色がきれいなのにも関わらず
長いあいだ色褪せしないことが気に入り、
お薦めしました。
ご注文者は
お色にこだわってらっしゃるだけでなく
薄くて軽いこと、
美しくデリケートな仕上がりであることにも
注意を向けておいででした。
それだけでなく、ことに端処理には
特別なこだわりをお持ちです。
「端の色処理が
剝がれないようにして欲しい。」と、
以前同じようにリクエストして
他店に注文したお財布を
見せてくださいました。
それを拝見しますと
こってりと端処理剤が盛られていて、
あまりの盛り方に驚いたくらいです。
「ここまで処理剤を盛ると、
本体を美しくデリケートに作っても
不細工なイメージになってしまいますが…」
と正直に印象をお話ししましたら、
もう一度子細に
当店製品と見比べてくださいまして、
「確かにここまではブサイクですね、
ではここまでならないよう、
ぎりぎりのところで作ってください。」
というお話しに。
きちんとご理解いただけたので、
美しくお作りすることが出来て、
良かったと思います。
このタイプの革は
みがくことができないので、
端処理剤を使って
丁寧に何度も色を塗り、最後に
コーティング剤でつやを出して固めます。
その工程は、まるで
女性のツメに塗るネイルカラーのようです。
何種類かの紙やすりで整えた表面を
ベースコートで整え、
それを完ぺきに乾かしてから色を塗り始めます。
色塗りも一回ではきれいな色が出ませんから、
ものによって2~5回ほど塗ります。
毎回毎回、塗るたびごとに完璧に乾かしては
もう一度、と塗りますから、
お時間のかかること、かかること。
最後にトップコートを塗って完成です。
コーティング剤はすべて柔らかい液体なので、
一辺一辺塗っては乾かす、を繰り返します。
形として出来上がっても、
ほんとうの仕上がりまで
驚くほどお時間のかかる革です。
革の良しあし、ということではなく、
革の「端処理」には、幾通りかの方法が
あります。
きれいな色の革はたいてい
みがくことのできない革質なので、
先に上げた方法で色を付けて
コーテイングします。
その色付けやコーティングにも
その革を使って製作する会社の個性が
出ます。
今回の初めてのリクエスト内容には
いろいろと考え及ばされ、
革質と端処理の関係について
お書きしてみようと思いました。
愉しんでいただければ幸いです。