実際のオーダー例
40年3,000件を超えるオーダー実績
貴方のオーダーのヒントになさってください。
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バッグを作る革は、どれくらいの量が必要?
小さなバッグから大きなバッグまで、
当店でお受けするバッグの大きさは
さまざまです。
当店でお作りするバッグは
素材も色も一点一点違いますから、
毎回ひとつのバッグに対して
その材料がどれくらい必要かを考え、
それに合わせて革を購入します。
*栃木レザーのヌメ革製作最中
みなさまは
オーダーバッグをひとつ作るのに、
実際に使用する面積(正味面積)の
何倍の革が必要だと思いますか?
革という素材は、
一枚の全体を使うことができない、
という事実が重要です。
答えは、当店特製牛革のスムースですと
正味面積の3倍以上を必要とします。
15年ほど前までは2倍強でしたが、
最近の革の状態ですと、
ついに3倍以上になってしまいました。
*バッグの型紙を載せて
どこでパーツを取るか、試しているところ。
手前側はほどんど製品にできない部分。
当店の特製牛革はすっぴんのお肌のため、
表面のキズが目立つところだけでなく、
皮膚の下のキメの整っていない
伸びの大き過ぎる部分についても、
決して使わないからです。
また、ここ5年ほどで、
避けられないキズもかなり増えてきました。
すっぴんの革は、歩留まりの悪い素材です。
量産品の材料として選ばれないのは、
この点も大きなネックとなっています。
でも、この革の品質の良い部分は
経年変化がうつくしく、良い手触りで、
使う人に合わせてうまく伸びて
馴染んでくれますし、香りもよいです。
同じすっぴんの革でも
型押しとなると少し話が変わり、
スムースの革に高熱と高圧をかけて
ぎっちりと型を押しますから、
革の密度が高くなって
繊維がしっかりしてくれるため、
歩留まりも良くなり、ロスも少し減ります。
それでも具体的には2.5倍くらいでしょうか。
表面に型が押されることで
傷がかなり目立たなくなることも、
ロスが減る大きな要因です。
*ハイブランドの革は型押しの範囲も狭い。
向こう側は型押しされてない部分。
さてそれでは、ここ数年お薦めしている
ハイブランドの革はどうでしょう?
これは想像しない結果だったので
今回の話題にしようと思いました。
こちらの原皮はカーフで
元の繊維はかなりしっかりしています。
クロム鞣しx化粧した革x型押し、のため
表面のキズはほどんど目立ちませんし、
さらに密度の高い革になっていますから、
私どもは最初、もしかすると
2倍くらいではないかと想像していました。
ところが…
けっきょく当店のスムースと同じくらいで
正味の3倍ほどの革が必要だと、
何年か使って結論が出ました。
まずとても興味深い点ですが、
海外の革の型押しは
全面に施されているわけではありません
(日本製の革では考えられません)。
そういう部分は製品に使えないこと、
それから
元々の革一枚が小さいこともあって
効率よくパーツが取れないこと、
などがあります。
このような条件を考え併せますと、
ファッションアイテムの中でも
バッグがなぜ高額なのか、よくわかります。
*本製品として使えない革の部分は
ダミーの製作に当てています。
材料だけでなく、
新作にはそもそも元型がありませんから
試作をするのに時間がかかりますし、
試作を試用し使い勝手を確かめ、
本製品にするまでの検討もあります。
また、最終的に本製品を決定するにあたっても
もう一度同じプロセスをたどることになります。
当店のオーダーバッグは、
そのすべての工程を経た一点一点を
みなさまにお渡ししています。
製作にあたっては
流れ作業で作るわけではありませんから
バッグ一点を作るだけでも、
すべての製作過程を作れる技術を持った
ひとりの熟練した技術者が必要です。
こうしたオーダー品一点をひとりで
きれいに作り上げることのできる
技術を習得するのにも、長い年月がかります。
仮にひとりの技術者しかいなくても、
アトリエには90x180センチのテーブルがひとつ、
ミシンが1台、漉き器が1台、
革の置き場ももちろんないといけませんし、
緻密な製品であるなら
出来ればこの2倍の什器が欲しいところもあり、
ある程度大きな製作場所がないと
作ること自体ができなくなってしまいます。
身に付ける製品の中で
バッグがもっとも高価になるのには、
こういった理由があります。
当店フルオーダーメイドのバッグを
お持ちになっているクライアントのみなさまは、
こうした細心のプロセス、紆余曲折の
すべてを手に入れていらっしゃるのです。
こんな事情もお楽しみいただけると
嬉しく存じます。