2024.07.15
リアルイタリア、トスカーナの生活#3
今回は有名な写真風景(1枚目)から入ります。
デザイナーが行った街のひとつは、
人口が2000人あまりの小さな街だそうです。
*左は写真のロケーションとして有名な糸杉。
*雨の日にも美しさがあります。ネコもいる。
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こんな景色の中で、人々は
どのように暮らしているでしょう?
街の中に
雑貨屋や靴屋がないことが不思議です。
肉やさんはあっても、魚屋さんはありません。
でもレストランには、魚料理があります…
そう言えば、売っている野菜もほとんど見ません。
根菜などはどうして入手しているでしょう?
観光がメインの街ですから、
観光客が楽しめる買い物品店と薬屋さんは
少なくありません。
小さな街なので
取り扱いの無いものがあっても
不思議ではありませんが、
最低限の必需品だけしか売ってませんから
(しかもお店が開くのは短時間)、
何かしら困ることはないでしょうか?
「朝」の市場にその答えはありました。
*左は八百屋さん、右は魚屋さん
大広場には、午後2時くらいまで、
大きなトラックが何台もいます。
トラックをおもむろに解体しだすと、
大きな大きな屋根付きの店舗に早変わり。
あっという間に作ったアーケードが
毎朝並ぶわけですから、
開店後にそれを初めて見ると、
昨夕はなかったお店がにわかに現れた、
と驚くことになります。
その中には、新鮮な野菜や果物を始めとして
キズ絆創膏のような雑貨を売る店もあります。
*左はスニーカーやさん、右は花屋さん。
写真には取りませんでしたが、
下着屋さんもありました。
そして花屋さんが来るあたり、
さすがは花のあふれる街だと思います。
このように、他人の領域を荒らさない
といったイメージの商売のやり方で、
みんながそれぞれ自分の役割を
きちんと果たしている、という印象があります。
2000人という居住者数に見合った
自給自足の生活かもしれません。
*左は映画「グラディエーター」撮影で有名。
*道中出会った親子と、3人で脱いだ泥靴の跡(右)。
上の写真の撮影場所を教えてくれたのが
途中から一緒に歩いた母娘です。
街中からしばらく歩き、
その後30分ほど
粘土質の泥土道を滑りながら歩き越えると
出てくる場所ですが、そこは
泥土が靴の下にベタベタと張り付いて
まるで靴カバーをしたまま歩いているか
のようになるので、
3人で一緒になって笑ってしまいました。
するとお母さんが
「ここがグラディエーターの場所よ。」
と教えてくれたのでした。
簡単なイタリア語であいさつすると、
女の子は自分の名を名乗って
はにかんでいました。
その後からお父さんがやってきて、
「日本からですか。」と
慈愛でいっぱいの目で会話をします。
私の方はというと、普段使わない
慈愛という言葉が
記憶の向こうから出てきました。
*岡の先にあるアグリツーリスモのひとつ。
こういう野の花でお父さんは花束を作りました。
そのお父さんは、その少し前に
野に咲く花を少しだけ摘んで
花束にして、その子に渡していました。
彼らが向かっていたのは、
もう30分ほど歩いた先にある
アグリツーリスモのレストラン。
ゆっくりと
泥道を愉しみながら、笑いながら
友人夫婦と歩いて行きました。
雨が上がり、最後には強い日差しになった
その風景の向こうに、弾むように歩いている
彼らの小さなシルエットがありました。
その光景は
いつでも目に思い浮かべることができます。
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美だけでなく
愛にもあふれた土地柄のようです。