2024.08.10
リアルイタリア 小さな街のレストラン
台湾から友人が来た時、
とても喜んでいたことがあります。
「日本にはランチタイムがあって、
この高級店のこんなにおいしいものが
信じられない値段で食べられる!」
詳しく聞いてみますと、
台湾のお店には
ランチタイムがない、とのこと。
高級店は一日中同じ値段で
お料理をサーブするようです。
どこの地方にも「当たり前」があります。
自分の街だけにいると、
それがじつは
多くの場所では当たり前でないのだ、
とは、なかなか気づきません。
私が行ったイタリアの小さな街にも
ランチタイムがあって、
それぞれの店で工夫したメニューが
いくつか用意されます。
その後やはり2時くらいから
中休みするところもあれば、
メニューを飲み物だけに減らして
営業を続けるところもあります。
そうかと思うと、夕方~夜しか
オープンしないレストランもあります。
そのようなレストランはたいてい
より格式あるお店で、
メニューも凝ったものが多く、
優雅な店内装飾をしています。
その中で、私がもう一度入りたかった
小さなお店を思い出します。
店内席が8人程度、
外席も同じくらいの席数のお店で、
ご主人と奥様、従業員が一人
という小さなレストラン。
お昼過ぎ1時半頃入ったのですが、
隣のテーブルでは小さな女の子が二人
ご飯が終わった後のようで、
立ったり座ったりうろうろしたり、
絵本を見ながら
おしゃべりしていました。
ご両親は彼女らの相手をしながら、
お客さんにお料理を作ったり、
店頭販売の肉を用意したりしています。
そこで食べたのはピチというパスタと
生野菜のサラダ。
ピチはイノシシ肉のトマトソースで、
おかわりしたい、と思ったほど。
生野菜はいろいろなお店で食べましたが、
おもしろいのはどこのサラダも
キャベツの太い千切りが入っていて、
日本のサラダとはかなり違うイメージ
(日本のサラダは盛り付けがきれいです)。
ドレッシングがかけられていなくて、
目の前にオリーブオイルとバルサミコ酢が
ビンごとドン!と置かれます。
そしてその後でお塩が来ますが、
それがまるでつけ足しのように
最後に置かれるのがおもしろいです。
何よりも最高!なのが
どこのオリーブオイルもバルサミコ酢も
味わいがあって、お塩は要らないほどです。
でも、このピチのお店のバルサミコ酢は、
まずひと口食べて思わず
目を見開いたほどのおいしさで、
もう一度行こう、と思っていました。
ところがこのお店、中休みはなく
1日ずっと開いているので、6時には
閉めてしまうことがわかりました。
小さな女の子たちの生活に合った
レストランの営業時間なのでしょう。
お料理をお客さんに出すこと、
自慢の肉や肉の加工品を売ること、
これを昼~夕方で行っています。
こんな時間帯のレストランは、
東京では見たことがありません。
彼らには観光地という利点もあって、
普通なら決行するに勇気のいる時間帯で
営業時間を成立させています
(彼ら自身は
そんな風に思っていないでしょうが)。
自分たちがしたい生活をする、
そして
それを成立させる方法を見つける。
もし私たちが、自分の時間を
自分のために自在に使う彼らのように
暮らしていければ、
あの優しい目を
持つことができるのかもしれません。
私は、ITを駆使することで
多くの人が自分で自分の時間を
うまく使いこなせるようになる
と思っておりましたが、実際
なかなかそれは難しいことと感じます。
しかし、物流などは別として、
ここでは、ITとはあまり関係なく、
そういう生活を成立させることが
できています。
ご近所の方らしき人々が、頻繁に
この店に肉を買いにやって来ています。
マンジャーレ、カンターレ、アモーレ。
食べて、歌って、愛する。
シンプルな人生観のお国柄だから
できるのか、
歴史や景観を護ることが前提で生きているから
できるのか?
おそらく彼らには
自分たちが何を大切にするか、
はっきりとわかっているから
それを実行しているだけなのかもしれません。
何かを諦めるのではなく、無理をせず
限られた時間を
大事なものにだけ使う。
こんなことが当たり前にできるのは
すばらしいこと、羨ましく思う生活です。