2024.08.17
ゾウ革ネイビーのエレガントなファスナー長財布
「内側の革は柔らかくしてくださいね。」
というお言葉とともに
オレンジの革をご指定いただいたので、
イタリアの革を使うことにしました。
外側はゾウ革のネイビーです。
シックなネイビーカラーをパッと開くと
オレンジが出てきて、
明るい楽しい気分になります。
今回の表・裏のゾウ革の斑柄はこんな感じ。
深くしっかり入った斑柄で、きれいです。
全体を手で触れられる大きさですから、
使っていただくうちにツヤが出て
見違えるようなお色になるでしょう。
さて、最初にご紹介した
内側の革を柔らかく…というご希望内容ですが、
その解釈も含めて、じつは
これほど難しいご要望はありません。
それは、たいていの場合、
きっちり形が取れていても
柔らかく感じられる革のタッチが欲しい、
というご要望だからです。
もし内側全体を柔らかくしてしまったら、
ファスナーを開く時からヨレて、
使いにくいことこの上なくなってしまいます。
以前もお書きしたように、
革には硬めの革と柔らかい革とがあります。
どちらも、使っていくにしたがって
最初より柔らかさが増していくのが
革という素材の特徴です。
硬い革をそのまま使うと
そのような製品になりますが、
当店の技術であれば
柔らかいラインで作ることもできます。
同様に当店では、
柔らかい革を使用する場合でも、
硬いラインで製作することも可能です。
ほとんどのご注文者には
このふたつの要素の区別がありませんから、
製作する側に
それなりのキャリアがなければ、
どう作ればご依頼者のご希望に沿うのか、
正確な理解ができなくなってしまいます。
ですから今回のオレンジは
薄く漉くとかなり柔らかくなることもあり、
どんな風に料理しようか、というのも
考えどころでした。
たとえ、革を漉く技術や
パーツを組み立てて縫う技術があっても
ご注文者の思うような製品にならないのは、
こうした「考えどころ」が
あいまいだったり、
結論が出せないまま
製作を進めてしまうからです。
初めて作る製品ばかりの
フルオーダーメイドでは、
どれほど「考えること」が大事か
今までもお書きしてきましたが、
かといって、すべて考え抜いてから
作りだす、という方法であっても、
実際の現場ではこれが
的外れであったことが明らかになる、
ということも少なくありません。
ある程度まで作り進めていくと、自然と
解決方法が出てくることもありますし、
その場その場で判断しながら作ることで
新しい解決策を見出すこともあります。
「手を動かすこと」と「考えること」は、
フルオーダーメイドの製作者にとって
車の両輪のようなもの。
そんな力量のある当店の製作者が
みなさま一人ひとりのために、
完成品を作り上げるまで専任になります。
想像するだけでも
わくわくしませんか?
このたびのご注文も
ありがとうございました。