2017.12.10
コードバン長財布のフルオーダーメイド
「コードバンのお財布が欲しいんです。
こんな感じのものを作ったら
おいくらでできるでしょう?」
アポイントなしで
急にお出でになったクライアント。
現在お持ちのお財布も、
外面は黒いコードバン製。
お札がたくさん入らないので
たくさん入れられるものが欲しい、
というリクエストです。
コードバンも最近は入手困難で、
一体何が起こったのかというくらい
革のお値段も高騰しています。
4~5年前の
2・5倍くらいにはなりました。
それは、コードバン以外の
馬革の部位の売れが著しく悪く、
コードバンに
すべての革を加工するための費用を
載せざるを得ないという
状況になったからだそうです。
いろいろな事情がありますね。
それでも
黒色であれば、まだ
見つけられる状況ではあります。
さて、今回のお財布には
クライアントのご希望による
珍しい特徴があって、
外側のパーツから
内側の札入れまでを、ぐるりと
一周巻いて
一枚のパーツでお取りしています。
しかも、なおかつその札入れ部に
少しだけマチをつけて、という。
なんと贅沢なことでしょう。
しかしこれは
ただの贅沢ではありません。
小さなサイズなのに
札をたくさん入れられる、秘策なのです。
かなりの難題でしたが、
クライアントはそれをご理解の上で、
ご注文くださいました。
ぐるっと底が回っているところは
まことに美しいですし、
手触りにも
すばらしいものがあります。
縫い目や革の合わせ目で感じる、
触った時の手の引っ掛かりが
一切ありませんから、
最高に気持ちのいい使い心地です。
実は今回、製作中に
大変なことがありました。
今まで入れていた革やさんから
お入れした革が、
革を強く曲げることで、わずかですが
表面が割れてしまったのです。
(註:栃木レザーではありませんよ)
最初、何となく表面の感じが
いつもと違うな、とは思ったのですが、
まさかここまで違うとは…
信頼のおける革やさんのものなので、
ちょっと見る目が甘かったようです。
このように、うっかり見ていると、
エコ観点からのルール変更や
作る側の事情によって、
革という素材は、怖ろしいほど
製作方法を変えられてしまいます。
クライアントのために
良い素材をお選びできる
目を持つことも、
大切な技術のひとつ。
最終的には困難を乗り越え、
良いお品をお渡しできて良かったです。
ありがとうございました。