2024.06.17
オーダーの仕方、同じ形のバッグをふたつ持つこと ゾウ革ダークネイビー 40315
こちらは一人の方からの
ふたつ目のバッグのご依頼品。
色が違えば
イメージはまったく変わります。
それがファッション製品の
おもしろいところです。
ゾウ革なので、今回のお写真では
正面、裏面と、柄の違いをお見せします。
ふたつとないこのような違いが、
たとえ同じ形であっても
イメージの違いとおもしろさを生みます。
こちらのクライアントは
使いやすく、
ご自分に合っているという鞄を
ずっと使い続けてきました。
それがこのオーダーメイドに繋がっています。
よくここにお書きすることですが、
まったく新しい仕様のバッグは
もしかすると使い勝手が合わない、
ということが出るかもしれません。
そこでお奨めしているのが
「過去の使用履歴から、使い勝手が
自分に合ったものを考えていく方法」
です。
「ブログを見ていますと、
最近は見本のあるバッグの注文が
多いようですね。」
と言われることがありますが、
それは、使われない、
無駄なオーダーメイド品に
ならないための知恵です。
そして、見本品があるなら製作が楽だろう、
とお思いになる方もいるかもしれませんが、
ではどうして、その製作を
実行に移す人が、他にないのでしょう?
それは(やはりここによく書くことですが)、
見本があっても
かなり大変な作業だからです。それは、
バッグにはたくさんの製作方法があって、
そのすべての製作方法を会得できる人
(これは一生涯
勉強し続けなければなりません)は
かなり少ない、という現実もありますし
一点一点のオーダー品に合わせて
まったく違う材料を揃え、
毎回製作方法を考えながら作ることには
けっこうなストレスがあります。
工場での流れ作業では、
大量に作るがために、前もって
その製品に向けたすべての材料を
別注して揃えることができます。
そして、製作する人達の替えが利く
製造フローを用意できますから、
その人たちは
全製作の中の一部分を作るだけです。
それに引き換え、
フルオーダーで作るということは、
一つひとつに適した材料を選び、揃え、
ひとりの技術者が最初から最後まで
一貫して作る必要がありますから
(一点一点製作方法が違うので
流れ作業に落とし込むことができません)、
その技術者が
それぞれの異なった製作技術をすべて
会得していなければなりません。
また、見本品と革素材が違うことで
(革素材は、
たとえ同じ種類・ロットであっても
個体差の大きい素材だからです)、
根本的に
まったく違う製作方法になることも
余儀なくさせられます。
そして通常なら、ひとつのバッグを
一人で作ることができる人の持つ技術は
範囲が限られています、例えば、
メンズを作る人には
レディスを作ることは耐えがたく、
バッグを作る人にとって財布を作ることも
やりたくない仕事のひとつです。
私どもが「技術力」という時には、
異なる種類の製作物が持つ
製作上の特性を把握し、
どれにでも対応できる力を指しています。
それは
技術者たちの持つ技術そのものであり、
製作の肝を見抜くという思索力であり、
足りない部分を補うことのできる力で、
製作しながら想像力も使います。
当店では、
こうした高度な技術者をひとり、
ご注文いただくみなさまには
フルタイムで
一定期間雇っていただいています。
ありがたいことです。
そして最後になりましたが、
表題の「同じ鞄をふたつ持つ意味」は
・イメージの違い
=必要なファッションのイメージを作る
また、
・ふたつ持ち=バッグの長保ち
ということに繋がります。
ファッションのカジュアル化が進み、
どんな場所へ行っても
カジュアルな服装の方が多いですが、
たとえカジュアルな場であっても
その場の雰囲気に合わせて装うことは
主催者側を重んじることに繋がります。
このような気持ちは
同じ気持ちを持った人たちが見ています。
デザイナーは海外へ行くと
特にそのことを強く感じ、
「良い方たちとお知り合いになるなら
きちんとした格好をする方が間違いない。」
と言っています。
そんなわけで今回は、
同じ形のバッグをふたつ持つことに
焦点を当ててみました。
このたびのご注文にも感謝申し上げます。