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リアルイタリア、トスカーナの移動方法
2024/07/2015年くらい前までなら
多くの日本人とすれ違うことがあった
トスカーナ地方ですが、
コロナ前と今回、二度の渡航では
ほとんど日本人観光客に会いませんでした。
今回は、それが往路飛行機の中でも同じで、
随分様変わりしたものだと思います。
同じアジア人ですと
中国、韓国、台湾の人たちはたくさんいました。
*城壁に囲まれた街には、城壁自体に
街の印(シンボルマーク)が刻まれています。
現地に住んでいる人はというと、
私が訪れたひとつの街では
インド系が増えている感じです。
街によっては、
アフリカ系も多い、と聞きます。
14歳と17歳のインド姉妹から聞いた
ある小さな街の学校教育は、
昼過ぎに家に帰れる程度の時間帯で、
いったいどうすればそんな多くの教育が
できるんだろう?というほど
語学学習だけでも
たくさんあるようでした。
選択できるようになっている、
ということですが
妹は国語(イタリア語)、フランス語、
英語、を学び、姉はそれにスペイン語も加え、
高校では日本語も少し学んでいるそうです。
旅をすると、言葉の大切さを痛感します。
言葉の大切さと言えば、
もちろん、他国の人と話すことも
楽しみのひとつですが、
*左右とも別の街の門。城壁で護られている都市には
いくつかの入り口があります。
それよりもここでの大きな理由は、
トスカーナ地方を移動する方法はバスで、
便利な路線はたくさん出ているのに、
時刻表があっても、なきがごとし、だからです。
もしかすると、
コロナ後に、三つのバス会社が
ひとつの会社になったことで、
まだまだ混乱しているのかもしれません。
コロナ前の時刻表は信頼でき、
バスの発着時間も正確で
楽に旅することができました。
ところが今回は、時刻表があてになりません。
バスのチケット売り場で聞いた時間と
インターネット掲載の時間が違う
(ローカルバスです)、
おまけにバス停には、ある時間になると
バスがぱらぱらと同時にやって来るという、
何が何だかカオス状態ですから、
同じバス停にいる観光客と、どこへ行くの?
と聞き合い、バスが来ると
かわりばんこに運転手に尋ねます。
「これはxxへ行くの?」
*街にはモニュメントもありますが、
中心地は教会によってまとまった地区です。
一番信頼できる答えは運転手の情報でした。
どうして他のバスの時間も知ってるの?
というくらい、きちんと教えてくれます。
それも英語で、です。助かります。
バス停で会った16歳くらいの少女は
きちんとした英語で路線の説明をし、
親切に、私たちがバスに乗るまで
見ていてくれました。
私と一緒にいたのは、スペイン語を話す
メキシコ人女性で、医療関係者なので
その路線の病院を見学するのだとか。
彼女がその親切できちんとした少女のことを
「Linda」と呼んだことが印象的です。
私もたまたまその意味を知っていたので、
「ほんと、彼女はLindaだね」と返しました。
私はこの言葉を、
このメキシコ人女性と別れる時にも進呈しました。
笑顔のすばらしい女性でした。
彼女と一緒にバスに乗ると、前出の
帰宅途中のインド姉妹と出会い、
姉がスペイン語を話すというので、
皆でいろいろな言葉で話をしていました。
妹は目を輝かせて、
私は日本が大好きだから、日本へ行きたい、
と言ってくれます。
そして、その近所のお薦めの観光地を
教えてもくれました。
長い路線があっという間に過ぎていきます。
*バスから見る景色もずっとこんな感じ。
途中、そのバスには、
イギリス人夫妻と台湾人四人が加わります。
6人は「やった!乗れたね!
これでxxへ行くことができる!」と
喜んでいました。
きっと私たちと同じことを
違うバス停でしていたのでしょう。
とすると、この人たちは
ひとつの団体のように見えたけれど、
同行者ではないな…
思わずにんまりとしてしまいます。
*ある街は、翌日から花祭り。教会の前に
花壇が作られます。この教会は粘土質の土壌上に
作られたため、のちに土台内部に水の通る道を作って
修復されましたた。右はその教会の模型で、
どれだけの作業をしたかが見て取れます。
さて、これをお読みになって
そんな不便なところは行きたくない、
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも、それを押してでも見たいと思う、
他所とは比べようもない景色が
ここにはあります。
既成のツアーでは行くことのない街を
ゆったりと暮らしながら観察する旅も、
たまにはおもしろいかもしれません。

ゴールドブラウン、ゾウ革の名刺入れ 40414
2024/07/19他のご注文者と一緒に
たまたまご来店くださって
クライアントになってくださった方も
いらっしゃいます。
お連れくださったご注文者がどのような革で
どのようなご注文をしたかを
見にいらしてくださったのですが、
その時のお話の流れで
ゾウ革のゴールドブラウンをお見せしたところ
これはスゴイ!となって、
毎日持つ名刺入れにしようかな、と
ご注文をいただきました。
この方もお若く、勢いのある方です。
すばらしいご縁をありがとうございます。
たまたまその時、
別の方のゾウ革小物のご注文品を
お見せしましたら、
「これなら名刺入れがよさそう」と
パッとお決めになりました。
経年変化を楽しみになさりたいご様子です。
お作りした名刺入れを
この方がお仕事でお使いになると思いましたら、
きっと名刺交換した方とは
いろいろなお話になるだろう、と
容易に想像できます。
そこからどんなに
いろいろな話が広がっていくことか…
ゾウ革で、しかもこのお色は
ほとんどの方が今まで見たことのない
革ですが、それにもかかわらず、
小さな製品であっても、
誰が見ても、
特別な感じを強く感じるオーダー品です。
この革でご注文くださった方の中には、
複数のオーダーをくださった方が
何名もいらっしゃるくらいです。
有名ブランドの名前が入っているわけでも
ありませんし、
誰もが知っている周知の革でもありません。
しかし、何も知らない方々、
時に革にはあまりご興味のない方々が
この革でお作りした製品を
すばらしい!と言ってくださるのは、
誰にもわかる
動かしがたい魅力を持つ革製品だから、
だと言えるでしょう。

リアルイタリア、ファッションで表現される矜持
2024/07/18今回のイタリア渡航について
デザイナーが嬉々として話したことが
とてもおもしろかったので、
お書きすることにしました。
*トスカーナ地方のシンボルともいえる
壁面アーチからの丘の風景。
「フィレンツェ空港に着く飛行機は
フランクフルトで乗り換えするの。
そこでね、
最高のクルーチームに会いました!
それは”エアドロミティ”の人たち。
小さな航空会社で、小さな飛行機に
3人のフライトアテンダントがいたのだけど、
それが今までに出会ったことのないクルーたち!
リーダーが(年齢はよくわからなかったけど)
とてもきれいにスーツを着ていて…
肩ラインがちょうどいい加減で、
身ごろは身体のラインに沿って
きれいなカーブを描いているんだけども、
ゆとりの取り具合が絶妙なスーツなの。
動いてもぴたりとはまっていました。
ドロミティのイメージカラーの
ブルーが印象的なネクタイも、
絞め方にスキがなかったです。
ネクタイの絞め方に感じ入ったのは
私は初めて。
とくに変わった締め方ではなかったのに…
他の二名(一人は女性だったのだけど)も
彼らも上等な着こなしで、
同じようにぴたりとフィットしたスーツを
しわひとつ出るでなく動き回っていました。
女性のパンツスーツもすばらしかった、
あのスーツはいったいどこで仕立てた?
*ある街のシンボルマーク。街の
大切な場所には必ずこれがあります。
とにかく、その中のリーダーからは
目が離せなかった。
ハンサムとかいうことでなく、
彼の身のこなしには
イタリア男性としての矜持を感じました。
飛行機って始めに緊急時の説明をするでしょ。
それが、
それが、初めて見る美しさなの。
もう美しいわけ、ただただ見事なの。
まるで
完璧な俳優が演じる舞台を見ているようで、
それでいて噓がなく、それが彼の本質だ、
ということがわかるの。
*街の中心にあるコムーネの建物の
時計台と釣鐘、シンボルの動物。
乗客の中で
私だけがガン見していたと思うけど、
普通そういう場面て、ほとんどの人は見ない。
クルー自身にしても適当に済ます人は
少なくありません。
私も、いつもだったら適当に見るだけです。
でも彼は、まさに
イタリア男性の代表として
誇りをもって説明していました。
それがひと目見ただけでわかり、
それが私のすべてを彼に向けさせました。
あんなにすばらしいアテンダントは
今までに見たことがありません。」
これは往路飛行機のことだったとのことで、
「往路のことがあって期待してたから、
復路はがっかりしました。」
というデザイナーの言葉を聞きますと、
同じエアラインでも
同じレベルの人はなかなかいないのだと
想像がつきます。
*夕方にはレストランの外席にもなる道路は
レストランが閉じている時も美しい。
話は続きます。
「トスカーナ地方の男性は
自分の美の基準をしっかり持っていて、
それに合致するように装い、
居心地よく暮らしているのだと思います。
だから他人に優しい。それも彼らの美学。
いろいろなホテルに泊まりましたが、
ホテルの男性オーナーは
みんなシュッとした出で立ちでした。
(シュッて何なんでしょ?)
ワークパンツ風のパンツ
(大きなポケットが脇についたタイプ)の
ラインが日本で見るものと違って
細身で攻めてるイメージだけど、
何とも言えないゆとりあるラインで
きれいなフィットをしてるの。
この「何とも言えないゆとり」というのが
ポイントだと思います。
ウチが革製品を作る時と同じ感覚ね!
だからオーナーたちのうしろ姿も
思わず振り返ってしまうくらい魅力的。
あれは人をきれいに見せる技のある
パンツの仕立てだと思うけど、
ああいうものはどこに売ってるんでしょ?
で、そういう人はたいてい革靴で
きれいに磨いた靴を履いてて、
エレガントな立ち居振る舞いをしてました。
話が逸れてしまいましたが、
お会いしたオーナーたちは、一様に
優しい目をして、サービス精神を持ち合わせて。
チャーミング、という言葉がぴったりでした。
*散歩道のご紹介です
イタリア男性は、カッコよくしていて
女性に優しいから、キザだとか言われますが、
表面的にそう見える事象は、
彼らの美意識から来る行動なので
キザとかそういうこととはかけ離れています。
本質的にはずっと深いものがあり、
表面的で生半可な、
取ってつけたような態度とは違います。
彼ら自身にとっては当たり前で、
意識してないと思うけれど…」
*いまだに修道士の生活をする修道院があります。
*修道士の部屋は狭く、終日祈りを捧げています。
週に一度、右の大広間で全員で夕食を取るそうです。
なんだか男性ウォッチングのようですが、
「きれいなものには目が行っちゃうの。
全体像の一瞬の印象はほんとに大事ね。」
とのこと。
「あのような雰囲気を、無理するでもなく、
いつでも自然に醸し出せるのが
年齢を重ねた良さだと感じます。
ある程度の年齢になったら
あの慈愛の目と、ゆとりある動作が
できるようになるとステキですね。
今回の旅では、そういう良いモデルも
たくさん見ることができました。
自分はまだまだね…」
*日本の山と似た植物がたくさんあり、気候も
似ているかもしれません。この景色の中に人の
暮らしがあります。
デザイナーは、当店の女性顧客から
「自分がなりたいと思う
年上女性のモデルがいないから、
具体的なイメージがわかないです。」という
言葉をたまに聞くそうです。
もっと外へ出てみると、
自分が何を探しているのか
わかることがあるかもしれません。
「海外を見ることは
そういう意味でも大事だと思います。
たまたま革製品を作っていることから
何度も訪れているトスカーナでも、
自分が感じ取れることは
訪れる年齢によって変わっています。」
それぞれのシンボルの写真を
あらためて見ますと、
彼らが、生活している場所に抱く愛着と
生まれた国を誇りに思う想いが伝わってきます。
さて、すっかり話は変わりますが、
今回デザイナーがこの旅のために作った
プロトタイプバッグを、
1点ものとして正式品にお作りしました。
ご笑覧ください。
「これ、完璧な使い勝手でした。
ちょっとモノが入り過ぎるかも…」

ハイブランド革、フェアリーブルーのファスナー長財布 304N
2024/07/17頼んでくださったクライアントは、
長財布も欲しいと思っていたところだそうで、
どんな革がありますか?と
お尋ねくださいました。
お知らせした革の中から
お選びいただいたのが、このフェアリーブルー。
以前に日本製で
似た色目の淡いお色の革がありましたが、
ヨーロッパのお色目ですと
パキっとしたクリアなお色をしていて、
色保ちも悪くありません。
これに合わせてお選びいただいた
内側のお色は、ヌメのベージュ。
なんときれいな色合わせでしょう。
ひと目見た瞬間に
目がハート形になってしまいそうです。
持ち物には
そうした気持ちをアップさせる要素があると
良いですね!
この形の基となったファスナー長財布は、
以前このオーダー例でご紹介している
このオーダー品です。
オーダー例をよくお読みくださっていて、
とても嬉しいです、ありがとうございます。
仕様は少し変えました。
それにしても、前回はオレンジ。
フェアリーブルーのお色となると
製品の雰囲気はまったく変わります。
どちらも心浮き立つようなお色で、
持っているだけで嬉しくなってきます。
こうしたきれいなお色の革の場合、
糸やコバ(端処理)の色に
ご指定があればその色でお作りします。
とくにご指定がない場合、
お持ちになる方の個性を頭に浮かべながら
デザイナーが細部を決めていきます。
こんなところが
デザイナーがいるお店の良さ。
特にファスナーの布の色は
年を追うごとに廃版が増えていますから、
思った色がない場合も多々あります。
そんな時、この方だったら
どっちのイメージに色を転ばそうか…など
ご依頼者に合わせてお選びしていますから、
同じものはほとんどありません。
お受け取りのご連絡では、
「水色の長財布は
思ってたより革が柔らかいのに驚きました。
使いやすそうです。色も本当に綺麗で
気持ちが明るくなってきます。」
とご感想をいただきました。
ありがとうございます!
ハイブランドの革には
カーフのきめ細かさと柔らかさがありますから、
今回の作り方であれば
使いやすさは抜群と思います。
このたびもありがとうございました。
どうぞ毎日楽しくお過ごしください。

リアルイタリア、トスカーナの生活#3
2024/07/15今回は有名な写真風景(1枚目)から入ります。
デザイナーが行った街のひとつは、
人口が2000人あまりの小さな街だそうです。
*左は写真のロケーションとして有名な糸杉。
*雨の日にも美しさがあります。ネコもいる。
************
こんな景色の中で、人々は
どのように暮らしているでしょう?
街の中に
雑貨屋や靴屋がないことが不思議です。
肉やさんはあっても、魚屋さんはありません。
でもレストランには、魚料理があります…
そう言えば、売っている野菜もほとんど見ません。
根菜などはどうして入手しているでしょう?
観光がメインの街ですから、
観光客が楽しめる買い物品店と薬屋さんは
少なくありません。
小さな街なので
取り扱いの無いものがあっても
不思議ではありませんが、
最低限の必需品だけしか売ってませんから
(しかもお店が開くのは短時間)、
何かしら困ることはないでしょうか?
「朝」の市場にその答えはありました。
*左は八百屋さん、右は魚屋さん
大広場には、午後2時くらいまで、
大きなトラックが何台もいます。
トラックをおもむろに解体しだすと、
大きな大きな屋根付きの店舗に早変わり。
あっという間に作ったアーケードが
毎朝並ぶわけですから、
開店後にそれを初めて見ると、
昨夕はなかったお店がにわかに現れた、
と驚くことになります。
その中には、新鮮な野菜や果物を始めとして
キズ絆創膏のような雑貨を売る店もあります。
*左はスニーカーやさん、右は花屋さん。
写真には取りませんでしたが、
下着屋さんもありました。
そして花屋さんが来るあたり、
さすがは花のあふれる街だと思います。
このように、他人の領域を荒らさない
といったイメージの商売のやり方で、
みんながそれぞれ自分の役割を
きちんと果たしている、という印象があります。
2000人という居住者数に見合った
自給自足の生活かもしれません。
*左は映画「グラディエーター」撮影で有名。
*道中出会った親子と、3人で脱いだ泥靴の跡(右)。
上の写真の撮影場所を教えてくれたのが
途中から一緒に歩いた母娘です。
街中からしばらく歩き、
その後30分ほど
粘土質の泥土道を滑りながら歩き越えると
出てくる場所ですが、そこは
泥土が靴の下にベタベタと張り付いて
まるで靴カバーをしたまま歩いているか
のようになるので、
3人で一緒になって笑ってしまいました。
するとお母さんが
「ここがグラディエーターの場所よ。」
と教えてくれたのでした。
簡単なイタリア語であいさつすると、
女の子は自分の名を名乗って
はにかんでいました。
その後からお父さんがやってきて、
「日本からですか。」と
慈愛でいっぱいの目で会話をします。
私の方はというと、普段使わない
慈愛という言葉が
記憶の向こうから出てきました。
*岡の先にあるアグリツーリスモのひとつ。
こういう野の花でお父さんは花束を作りました。
そのお父さんは、その少し前に
野に咲く花を少しだけ摘んで
花束にして、その子に渡していました。
彼らが向かっていたのは、
もう30分ほど歩いた先にある
アグリツーリスモのレストラン。
ゆっくりと
泥道を愉しみながら、笑いながら
友人夫婦と歩いて行きました。
雨が上がり、最後には強い日差しになった
その風景の向こうに、弾むように歩いている
彼らの小さなシルエットがありました。
その光景は
いつでも目に思い浮かべることができます。
************
美だけでなく
愛にもあふれた土地柄のようです。