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ふたつ目は超軽量スマホケース 303N

ふたつ目は超軽量スマホケース 303N

2023/05/15

「もうこれ以上は無理かもしれません。」

とお答えしたご依頼内容は、

 

「以前作ってもらったスマホケースと

同じものが欲しいのですが、

もっと軽くしていただきたいのです。」

 

 

 

 

 

 

私どもでは、躯体の長保ちなどを考えながら、

いつでも、なるべく軽量のオーダー品を

お作りしていますから、

 

「これ以上に軽く」と言われますと

ちょっと途方に暮れてしまいます。

 

前回のケースも、同じ仕様で83gでした。

パタパタのページをお付けして、

シェルカバーも含めて

この重さであれば良しという重さですが、

どうしましょう。

 

 

 

 

 

「この面のカード入れを減らしても

大丈夫です。」ということで、

芯材の入れ方もさらに変えて

改変に改変を加え、とにかくやってみました。

 

たまたまシェルカバーも

超軽量のものがありましたし、

裏地専用の革の中にも

かなり薄い部分がありましたから、

そこを使えば何とかなりそうです。

 

 

 

 

 

 

そして出来上がったケースの重さは、

驚くことに46g、となりました。

私どももここまで軽くできるとは

思いませんでしたから、

この軽さでどこまで保つかが

これからの問題かもしれません。

 

しかしこのクライアントにとって

もっとも重要な問題は、

「とにかく軽く」でしたから

ご注文いただいた甲斐はあったと思います。

 

 

 

 

 

 

何かを入れる容器の重さは、

中身に合わせてお作りする必要があります。

バッグなどはそれを鑑みて

ギリギリの線まで落とすこともありますし、

 

逆に立派な体格の方で

重さは気にならない、という方へは

重めに作ることもあります。

 

当店でお作りするオーダー品は、

お使いになる方の身体に合わせて

お作りしています。

これをお持ちいただくことで、

身体が楽になり、

気持ち良くお過ごしいただけることを

願っております。

このたびもありがとうございました。

 

 

革になる前の牛と原皮の話:㈱栃木レザーにて

革になる前の牛と原皮の話:㈱栃木レザーにて

2023/05/13

久しぶりに㈱栃木レザーへ行きました。

今回案内してくれたのは

当店の革を製作担当しているMさん。

Mさんは下地づくりから仕上げまで

みっちりやってきた壮年の熟練者ですから、

革に関する新しい情報をたくさんお持ちです。

 

創業1937年の㈱栃木レザーの

営業を続けてきた長いスパンの中では、

工場で使う薬剤の変化だけでなく、

法律が変わったり

牛の育て方が変わったり、と

ひとつとして同じ状況はありませんが、

そんな中でも良質な革を作り続けようと

彼らは日夜努力しています。

 

 

 

*タンニン層を移動させているところ

 

 

原皮はカナダのトロントから輸入してますが、

一時期はアメリカの革も試したり…

と、試行錯誤の末

結局トロントの原皮に戻ったとのこと。

 

20年ほど前から、日本では

2年半以内の肉しか輸入できなくなっていることや、

効率よく肉を育てるための高価な配合飼料を

なるべく使わなくて済むように、

30年ほど前まで

4~5歳で肉になっていた牛たちは、

現在2~3年で肉になっています。

 

飼料だけでなく、牛の扱いも変わってきていて、

ここの所ずっと

キズや虫食いの多い革が当たり前になったのは、

それまでの習慣が変わったからだそうです。

 

 

 

*鞣し工程20のうちの1~3

 

 

 

昔は、牛たちを小屋に入れる前に

塩素水プールに入れる習慣でした。

私たちがプールに入る前、

小さな塩素水プールにざぶんと入るのと

同じ感じだったことでしょう。

 

ですがその時、

塩素水を誤飲してしまう牛がいるため、

その行程は止められました。

効率を求めて習慣も変わります。

 

元々なぜ塩素水に入れるかというと、

蚊や虫に刺されてかゆくなったりすると

牛がイライラして暴れるので、

それを避けるためでした。

 

塩素水に入らなくなると

虫刺されが増え、

そのかゆみを抑えるために

地面をゴロゴロと擦ったり

暴れたりして、キズが増えているようです。

 

 

 

*この後乾燥させれば、下地革が完成します

 

 

原皮の出荷量や質は

今後どうなると思いますか?

とMさんに質問しますと、

「これからは、代替肉の出現によって

肉の消費量がどう変わっていくかが

関わってくると思います。」

 

前にも書いたように、

「皮のための牛」はいませんから

「肉のための牛」がどうなるかが

ポイントです、か、なるほど。

 

今の総合餌は

どれだけどんなものを食べさせると

効率よく肉が肥えるか、をテーマにしていて

「肥育」という言葉もあるくらいです。

まさに「肉のための牛」ですね。

 

牛という家畜は、肉を除かれた後

頭のてっぺんからしっぽや蹄まで、

すべての部位が有益に使われます。

他にこれほど活用される例は

あるでしょうか?

 

貴重な皮だからこそ昔から、

長く使える革の状態にして革製品を作り、

使い続けてきました。

皮から革へ、はすばらしい発見です。

今日は原皮のお話でした。

 

 

メンズブリーフケース「エルム」の軽さと使いやすさ 30208

メンズブリーフケース「エルム」の軽さと使いやすさ 30208

2023/05/10

「鞄屋さんをたくさん見てきました。

ブランドショップも

めぼしいところはいろいろ見ましたけど、

使い勝手の良いバッグって

ほとんどないんですよ。」

 

ご自分用のカバンについて、

使い勝手と大きさなどを

しばらく考えていらっしゃった

クライアントが来店なさいました。

 

 

 

 

 

 

「ほんとに、これでみんな使ってるの?

という使いにくそうなバッグばかりで。

そんな時御社ウェブショップで

エルムというバッグを見て、

もしかしたら…と思いました。」

 

エルムは最近A4サイズのご希望が多いため

定番もA4と定めましたし、

店頭に置いてある新品もA4サイズですが、

 

20年ほど前に一番最初にお作りした

使い古しのB4サイズも、

持ち主のご厚意から

見本として置いております。

 

 

 

 

 

 

どうぞどうぞ、と

ふたつのサイズのバッグに

持ち物を入れていただいたところ、

B4サイズをお持ちになってひと言目に

「この大きさでこんなに軽いんですか!」

といただいた後、

クライアントの体格も考慮しまして、

B4がいい!というお話になりました。

 

ご注文者はサイズで迷っていらしたので

両方のサイズが店頭にあって

それが決め手になりましたが、

 

当店では

ご相談来店いただくみなさまには

前もって、

オーダーバッグに入れる持ち物を

すべてお持ちいただくことを

お願いしております。

 

 

 

 

 

 

当店の鞄類は

見た目以上にモノが入りますから、

たいていのご注文者に驚かれますが、

今回も例外ではありませんでした。

 

「思った以上にたくさん入りますね。

それにこれ、

あ、自立するんですね!

自立するバッグなんて、ほとんどないですよ。

 

それに

最近はこういうきちんとしたバッグ自体

あまり売ってないです。

それで、そうだ、オーダーがある、と

御社をお訪ねしたんです。」

 

 

 

 

 

 

出来上がり品を見て

「やあ、これは完璧!

すごく軽いし、良いなあ。ほんと軽い!」

と言ってくださり、

私どもも、ほんとに良かった、

と胸をなでおろしました。

 

最近はトートバッグ系のご注文が多いので、

きちんとしたビジネス系も

お作りできる機会があることは

喜ばしいかぎりです。

 

 

 

 

 

 

長く定番の製品は

時にブラッシュアップさせていきますから、

初号機よりもまた良くなっています。

 

このエルムは

もともと完成度の高い製品ですが、

自立の仕方を

もっときっちりとさせました。

 

 

 

 

 

 

今頃はきっと

快適にお使いいただいていると思います。

ご家族のみなさまで

当店の製品をたくさん使ってくださっている

このたびのクライアントには、

感謝感謝です。

どうぞ快適な毎日をお過ごしください。

 

 

 

特別なシステム手帳、ミニ6穴 303N

特別なシステム手帳、ミニ6穴 303N

2023/05/08

 

遠方からのメールのご相談にも、

私どもにとって

有意義なことがたくさんあります。

 

今日ご紹介するのは、

システム手帳のご注文品です。

 

 

 

 

 

 

ハイブランドの革を使った

特別な製品ですが、

クライアントは、職場が変わった折りに

頼んでくださいました。

 

仕事で毎日使うものは

とくにお気に入りを使いたいものですが、

 

このご注文を通じて

ただ気に入っている、だけでなく

毎日見たり使ったりすることで、

最初にこの手帳をオーダーした時の

ご自分の目指す方向性や

これからの仕事に対する心構えなどを

思い起こさせてくれることも、

大切な役割と感じました。

 

手帳には、嬉しいこと、大変なこと、など

生活のすべてが刻まれるわけですから。

 

 

 

 

 

 

今回のメールでのやりとりから、

(大げさな言い方かもしれませんが)

精神的な拠り所としての

道具の在り方を、

製品に込めることができたと思います。

 

ふり返ってみますと、

これを書いている私にも、その時々に

「これを持っていれば…」というモノが

あったように思います。

 

 

 

 

 

 

手帳は、そういう意味で

もっとも意味深いアイテムかもしれません。

 

メールのやりとりを通じて、今回の

クライアントの精神性の高さを感じ、

背筋の伸びるやり取りになりました。

 

クライアントのみなさまの

モノへのこだわりが、

便利さやお気に入り、

という域を出るのには、

こうした理由が

少なからずあるのではないかと思います。

 

大きな区切りの折の大切なご注文を、

ありがとうございました。

すべてうまく運ぶように、お祈り申し上げます。

 

 

 

フルオーダー革製品の値段は、革代か技術代か?(5/13修正文)

フルオーダー革製品の値段は、革代か技術代か?(5/13修正文)

2023/05/05

クライアントのみなさまに

製作技術や革の加工について説明する時、

どのようにすれば

まったく違う世界の人々に理解しやすくなるか、

デザイナーはつねに考えているようです。

 

「今日は、車会社に技術でお勤めの

クライアントがおいでになってね、

すごくおもしろい話をしたのよ。

車作りの一端を聞いてたら、

これは説明に使える、っていうのがあった!」

とは、さきほどの発言です。

 

 

 

*本体持ち手の内側に
ファスナーポケットを付けたカバンに、
持ち手をつけているところ。

 

 

「一般的にほとんどの人は、

革製品を作る時、一番高いものは

素材の”革”だと思ってるの。

 

まあ、量産品を作ってるメーカーは

大量に作るわけだから、最終的には

素材の値段も大きい要素になるのだけどね。

 

でも彼らはそれ以上の努力で

無駄のない流れ作業に落とし込む、という

大変な経過も経て、コストに結びつけています。

 

だけどメディアでは

材料費ばっかりがクローズアップされていますね。

目に見えるものでわかりやすいから。

 

 

 

 

*細い紐に穴を開けるための作業。
革は失敗することができない材料だから
一つひとつの作業に確実性を求められる。

 

 

そのため、ウチみたいに

量産やパターンオーダーの会社とは

まったく違って、

制作過程が違うものばかりを

一点だけ作る

フルオーダーメイドのお店に対しても、

量産の最終努力の結果である

革の値段ばかりに目がいっちゃうのね。」

 

「でもね、

この店でオーダー品を作っているみんなは、

一枚一枚性質の違う革を

どうやってそのアイテムに適した質感にするか、

とか、

どうやって軽くても保ちの良い製品にするか、

あるいは、

どうやって触り心地の良い製品にするか、

とか、

 

一つひとつのまったく違う製品に対して、

まったく違う側面から毎回考えて、

部分試作だってたくさんするわけじゃない?

革以外の材料も死ぬほどたくさんあるから

知識と経験だけじゃなく、

考える力がないとできない仕事だよね。

 

 

 

*持ち手を胴体部分にシンメトリーに
付けることすら、簡単そうで難しい。
最初から最後までひとつの製品を
一人で作れる技術者は、とても少ない。

 

 

 

そんな作り手の姿を毎日見ているし、

わたし自身だっていつも

新しい角度からのアプローチをしてるし、

なんで一番高いものが材料だって思えるわけ?

って、作ってる側からすると、

いつも不思議になるのね。

 

他のお店とかブランドで

もっとたくさんのお金出しても

ぜったいに実現してくれないのにね。」

デザイナーは言葉を続けます。

 

「作ってくれるところがあったとして、

みんなが同じ材料を使うと仮定しても、

作る人によって

まったく違うものが出来上がるんだけど、

そこまで想像がつく人は

世の中にほとんどいないんだね。」

 

 

「…ということを、

やっとこんな風にわかりやすく

言葉にすることができました。

 

他業種のモノづくりの人と話すと、

自分のやっている仕事も客観的に見えて、

とても勉強になるからありがたい!」

 

 

 

*ハイブランドの革。
この2枚を貼り合わせてから、磨きます。

 

 

こんなデザイナーの発言からヒントを得て、

本日はきれいな色のハイブランドの革の

加工のしにくさについてご説明します。

その原因は

ズバリ、革の層と断面にあります。

 

 

革にきれいな色を出すためには、

表面塗装(敢えて塗装と表現します)層が

下地(したじ)層を介して

革素材としっかり密着することが必要です。

 

そういう作り方の革には、

しなやかに柔らかい革と

切り目仕上げ用の硬い革とがありますが、

当店で良く使うのは、

アイテム的に後者の方です。

 

 

 

*2枚を貼り合わせたところ

 

 

そのタイプの革の表面は硬く、

表面だけを考えると、

曲げにくい、という性質があります。

ところが皮膚から下の層は柔らかく、

上質な革であれば

みっちりと繊維が詰まっています。

 

 

その革の断面は、下から

皮下組織、表皮、

下地(したじ)層、表面塗装層という

性質の違う4層から成っています。

1ミリちょっとの厚みの中に

その4層がつまっていて、各層に

それぞれ向いた加工法がありますから、

この断面をどうやって美しくするかが、

大きな問題になります。

 

 

 

*完成した持ち手ベルトの磨き部分。
写真にはなかなか写しづらい素材のため、
この色の完成品をご覧いただきます。

 

 

ご説明した素材の切り口を

何となく想像していただきますと、

上の2層の特徴は、

革本来が持つものとは相反するものだと

お分かりいただけると思います。

 

当店特製牛革のヌメも硬いのですが、

断面が皮下から表皮まですべて革で

同じ加工をして出来上がった革ですから、

すんなりと磨くことができます。

それは、以下の革本来の性質を

活かして作っているからです。

・しなやかで一体の革なので

表皮ごと下層まで一緒に曲げられる

・引っ張れば上から下まで伸びてくれる

 

そんな理由から

同じ素材で、同じ性質を持っている

革同士を組み合わせるのであれば、

ナチュラルに加工することができます。

 

ところで、当店のデザイナーが

車の技術者のクライアントから聞いたお話は、

以下のような、まことに興味深いお話。

 

「異なる素材をどうやって接合させるかが

また難しいんですよ。

例えば、鉄とアルミのパーツを接合させるには

どうしていると思いますか?

 

答えは、

(常温の中で)合わせて置いた両方の素材に

高速でネジを通すんです。

そうすると中で発熱して、鉄もアルミも溶けて、

ネジを引き上げた時には

両方の素材が融合して、くっつくんです。」

 

おもしろい!

頂戴したこのご説明の核心部分を使って

今度はデザイナーがこの方に

革の素材と加工について説明したことは、

言うまでもありません。

 

さて次は、

どんなクライアントがいらっしゃるでしょう。

このたびは、ありがとうございました。

 

 

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