実際のオーダー例
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貴方のオーダーのヒントになさってください。
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20年以上前にお作りしたカード入れたくさんの長財布の再注文 30205
2023/05/03「だいぶ前に作ってもらった長財布を
愛用していますが、
そろそろ作り直していただきたい。」
とにかくこの長財布がいい、と
あるクライアントは
はるばるおいでくださいました。
実物を見て見ますと、
なんとまあ薄くお作りしていることか…
今にしてもここまで薄く作るのが限度、
という感じの出来上がりです。
「軽さと薄さは変えたくないので、
同じように作ってください。」
これだけ革を使ったお財布なのに
この軽さですから、
それはもう、これより重いものは
使いたくないと思います。
見た目に重厚感があっても、
手に取ると
拍子抜けするくらい軽いのが、
当店製品に共通する特長です。
重厚に見えれば、
どんな良い場所で出しても
気後れしませんし、
良い服装にも似合います。
しかし、当時
ここまでカード入れがたくさんあり、
ここまで軽くお作りするのは
かなりのチャレンジだったと、
今更のように感じます。
いまは多くの経験を持っていますから、
ある意味では
ここまでチャレンジングになることは
しないかもしれません。
経験多い人の決断が
時によって保守的になる、という
例なのかもしれません。
いずれにしても
これこれこうして欲しい、という
未知のご要望に対して
つねに最大の考える量と
試す量とを維持していきますと、
これはもう、
フグのどこに毒があって、
どこには毒がないから食べてもいい、
と言い残して息絶える人のような
感覚にもなっていきます。
それを一緒に味わってくださるのが、
ご注文者。
ご注文者のみなさまには
良い生を生きていただきたいと、
そう思う気持ちがチャレンジをさせてくれます。
このたびは貴重な薄さの20年後を
お見せいただき、再注文いただき、
ありがとうございました。

レッドカラーの社内移動用の薄いトートバッグ 30311
2023/05/01「これはもう、完璧です!
思った通りにできてます。
良かったわあ。
こういうのを毎日使いたかったです。」
お渡しするなり
お褒めの言葉をたくさんいただき、
ありがたいご注文品となりました。
たしかにどなたが使っても
軽いですし、
使い勝手にストレスのないバッグと思います。
このご注文は
クライアントが社内で使うためのバッグで、
お持ちになるのは
A4サイズPC、
ストラップ付きのI Dカード入れ、
ペン3本、A5サイズの本、書類、
消毒液、あとは小物、といった感じです。
*型から下げられるA4サイズの薄いバッグ
「でもね、私、自分で注文出したくせに、
この赤は派手過ぎないかしら、とか、
柔らかく作ってくださいと言ったけど、
柔らかく、っていうのはちょっと違ったかしら?
とか、いろいろ考えて
ちょっと心配してたんです。」
ひと月以上の製作期間がありますから、
いったん少しでも心配になると
すべてが心配になってしまうお気持ちは
わかります。
自分の言ったことがちゃんと伝わったかしら?
フルオーダーメイドでは
それが最重要のポイントになります。
*厚みは4.5センチくらいですが、
内縫いなので見た目より量が入る
「こんなに小さくて、軽くて、
自分の持ち物がピタッと入るバッグって
ほんとにないんですよ!
もしも柔らかかったら、
PCもそうですけど、
その代わりに持つiPadとキーボードは
入れにくくてしょうがなかったでしょうね、
よくぞこういう質感で作ってくれました。
今日はもう、仕事中楽しみで楽しみで。」
*外ポケットにはスマホやIDカードなど
の他、大きめのものでも入る
「私、柔らかく、って言いましたよね、
それはね、今考えると
柔らかい革で、っていう意味で、
くたくたの柔らかい質感で作られていても
仕方のない言い方でしたけど、
よくよく考えてみると
柔らかいと
中身がうまく入れられないのよね。
後からそれに気づいて
それで大丈夫かしら、って思ったのです。
でもこのハリのある質感なら、
バッグに入ったもののなら何でも
片手でパパっと取り出せます。
おまけに
しっかりしてるのに、軽いんですね。
ほんとに良かった。」
*内側にはPCやキーボード付きiPadを
パッと入れられるポケットがある
よくみなさまが混同なさるのは、
「柔らかい革で作ること」と
「柔らかいバッグにすること」です。
おさらいしましょう。
革には・硬い革・柔らかい革、があります。
そして出来上がりのバッグにも、
大きく分けますと
・かっちりと硬く仕上がっているもの
・やわやわと柔らかく仕上がっているもの
の2種類があります。
ですから、
・硬い革でかっちり硬く作る
・硬めの革で柔らかく作る
・柔らかい革でかっちり硬く作る
・柔らかい革で柔らかく作る
という組み合わせで、製品を作ることができます。
*反対面の内ポケットには、3本入るペン差し
ストラップ付きIDカードがすっぽり入る
お料理を例にしてみますと、
例えば玉ねぎを
・日本料理で使う場合
・フランス料理で使う場合
それぞれ切り方から料理法、
味付けも違うと思いますが、
革にも同様にいろいろな加工法があります。
このたびの微妙なご注文品は
作るのは大変でしたが、
出来上がった製品をご理解いただけて
とても嬉しかったです。
ありがとうございました。

胸ポケットにペンを3~4本入れて持ち歩くためのペンケース
2023/04/29
こうして平らにお写真に撮っただけですと、
いったいどのように使うものなのか?
不思議に思うオーダー品をご紹介します。
これには見本品がありまして、
廃版となってしまったため
お困りになった方がご注文くださいました。
上は正面からのお写真、
下は上から見たところのお写真、
そして
3枚目は横から見たところです。
この3枚を見ても
何をどう入れてどう使うものか、
なかなか想像がつかないと思います。
さて正解は
「胸ポケットにペンを入れるための
ペンホルダー」です。
賢い作りだと思ったのは、
3枚目、下のお写真の上部に付けた
フタのようなものです。
ここがポケットの外に出て
本体だけがポケットの中に納まると、
ペンはきっちり収まります。
職業的にはドクターや弁護士、また、
事務用品のお好きな方々にお奨めです。
ご注文者はこのペンケースの愛用者で、
よくできたお品なのに
非常に安価なお品だったので、
プレゼントにもよくお使いだったそうです。
なるほど、4枚目のお写真のように
ずらっとペンを入れられますから、
胸ポケットから出した部分に
相手の方のイニシャルを入れれば
すばらしいプレゼントです。
ひょんなことから
お店においでくださることになった
クライアントですが、存外に
強者の文房具オタクでいらっしゃって、
人は見かけによらぬものだと思いました。
それにしても
この文房具の威力はすばらしいと思います。
ポケット内部を汚したり
ポケットに穴を開けたり、ということが
これを使うことで激減します。
お探しの方は当店をお訪ねください。

がま口財布の製作の難しさ
2023/04/27本日は貴重な体験をお話しします。
久々に落ちた大きな穴です。
がま口財布の奥深さを知る
良い経験をいただきました。
フグを安全に食べられるようになるまで、
フグのどこに毒があるかを
身を持って知らせた人たちがいますが、
命はかかっていなくとも、
私どもの仕事における
一つひとつの積み重ねは、
それに匹敵するほど大事なことです。
今回は見本品があり、見本品のがま口を
再生使用することになったため、
良かれ、と思って下した判断では
製作セオリーどおりに作らない、
という結論になりました。
ところが、
ちゃんと作動している実物があるにも関わらず、
オーダー品ではそれがうまく作動しなかった!
という例です。
*最初にお作りした小銭入れのマチ幅
上のお写真のマチ幅は
見本品と同じで、
開き具合も同様にし、新品であっても
使い勝手の馴染みがあるようにしたもので、
通常の製作セオリーよりも
幅を狭くして作っています。
下のお写真は、セオリーどおりのマチ幅。
片側の部屋につき、現物より
1センチ広くしたただけのマチですが、
この寸法が一か所変わるだけで、
外側の全体パーツの長さまで
変えなくてはならない事態が起こります。
ですからこのお直しは、大手術。
でもこれで、がま口が
うまく作動するようになりました。
もし原因がわからなかったら
修理する方法もわからず、
時間ばかりが経って難儀していたところです。
*セオリー通りに広げたマチ幅
こちらのクライアントは、
お渡しから1年経って
「がま口金具が外れたので
直してください。」
とおいでくださいました。
普段、1年くらいで外れるような
ヤワな作りはしませんから、
どうしたんだろう?とよくよく見ましたら、
マチ幅が狭いことで
外側のパーツの長さが短くなってしまい、結果
見事にすっぽりと金具から外れていました。
「ああ、ここか…」
見本の小銭入れのマチがとても狭かったので、
クライアントに「使いにくくないですか?」
とお尋ねした時、「問題ありません。」
というお返事をいただいたので、
見本品のマチ幅を踏襲し、
使い勝手を同じに定めた、その場所でした。
*修正前のもので
金具からY字の付け根までの距離が短い
見本品がうまく作動していたことで
そのマチ幅でOKと思っていましたが、
そこが素材の革と布との違いでした!
というか、
布系の量産品をたくさん見てきて
いつも感じたことは、
わりとノリで作っているものもあり、
あまり理に適っていない製品も
少なくないということ。
そして多少大きかったり小さかったり
曲がっていたりするパーツであっても、
何となくつじつまを合わせて
うまくひとつの製品にしているものも
けっこうあります。
これは
革以外の素材の
加工のしやすさにも繋がっていて、
革では許されない誤差であっても
やすやすとそのハードルを越えます。
*修正後。マチを広くしたことで
Y字の付け根までの距離は
必然的に広くなる
今回のことでは、
またしてもフグ毒のような落とし穴を
知ることができました。
頭で考えた結果や、
ただいまある現物の使い勝手、と
それ以上の条件が絡み合っている
新製品の結果は、しばしば違います。
クライアントのみなさま、
もしこうした落とし穴がありましたら、
いつでもご相談ください。
このたびはご相談ありがとうございました。
次回から
がま口のマチはセオリーどおり、
を基準としますが、
それによって
現物と違うと感じる仕様になる場合には、
まずその部分をご説明することにします。
単に一点一点の製品を作る技術を
習得するだけでなく、
このような無数にある落とし穴を
一つひとつ潰していくことが、
フルオーダーメイドという仕事の中で
もっとも大変なところです。
そして、
二度と出会わないタイプの落とし穴の方が
圧倒的に多いことに、たまに
歯がゆい気持ちになることがあります。

オーダー品のネーム入れの現場
2023/04/25みなさんは、出来上がった製品に
ネームを入れる現場を見る機会に
遭遇したことはありますか?
平らな製品に
器械を使ってネーム入れをしているところは
少ないですが、あります。
*器械を30分温める間に手順を進める
ここでは、文字を並べている
製品に押印できる場合はたいてい
シンプルな仕様の製品で、
入れる場所の厚みに
大きな変化がないことが条件です。
*高さを合わせる
当店のオーダーメイド品には
複雑なお品物が多いため、
ひとつの製品の中に
いろいろな厚みがありますから、
*型に文字を入れる
出来上がった製品に押すことが
出来ません。
それで、パーツにする前に
お入れする必要があります。
*試し押し用の革を用意する
ネームを入れた
「完成したパーツ」を作るためには、
あらかじめ
必要なパーツより大きめの革を用意します。
それは、この器械は
ネームを真っ直ぐに入れることは出来ますが、
パーツに対して並行に入れることが
出来ないからです。
*試し革を器械にセットする
それで、ネームを入れてから
正しいパーツの形に切り出して、
裏地をつけたり、等の
完成したパーツにするための加工をして行きます。
*金箔を開いて
器械を使っているからといって
誰でもできる作業ではありません。
革質によって
どのくらいの温度で
どれくらいの圧をかけて
(手でコントロールしてます)
どのくらいの時間をかけるかは、
まったく違います。
*試し押しをする
ベテランのネーム入れ技術者でも
ほんの少しのことで失敗しますから、
周到に練習をして
「いち、に、さん・・・」と
必要な秒数を口に出して数えます。
*押した直後の金箔を剥がす
ほんものの金箔や銀箔を使いますから
しっかり押印することは必要ですが、
皮の表面まで薄い箔を突き通してしまうと
やり過ぎて文字は滲んでしまいます。
*本番用の革を用意する
要は、このネーム入れひとつとっても
技術者の経験とカンが必要な作業だと
ご説明したいと思いました。
普段、誰にもできる
簡単な作業と思ってやっていることが、
細心の注意を払って行われていることに
ハタと気づいたからです。
*革の種類や入れるネームの長さによって
押しの重さや時間を変えて入れる
先ほど、お電話で問い合わせがありました。
「オーダーでキーホルダーを作ったら、
ざっくりでいいですから
おいくらくらいになりますか?
選ぶ革の値段などによって違うと思いますが。」
デザイナーは、以下のよう答えていました。
「キーホルダーのような小物は
革の量は大したことありませんから、
材料費、という意味では
在庫がある革なら関係ないです。
そのオーダー品の複雑さがどれくらいで、
どこまでの厳しいご要望があるかで、
お見積もりは変わります。
要は技術料が一番です。
まずみなさまの言っていることが
ちゃんと伝わっているかどうか、
それから、それがどこまで現実にできるか…
それがもっとも大事なことだと思います。」
*ネームが入ったところ
そうしたところ相手の方は、
「そういうことだったんですね。
いや、却って安心しました。
そこまで技術に自信があるところなら、
お電話して良かったです。
あとからスケジュール見て予約します。
よろしくお願いします。」
技術を習得するのは文字通り大変です。
毎日作業していても
漫然と行っているだけなら、
自分のものにすることは出来ません。
真剣に、命かけて作っているから、
みなさまにご満足いただけるお品が
できるのだと思います。
お正月休みから4か月、
そろそろ技術者たちにも休憩が必要です。
GWお休みをいただきますが、
お休み後にはまた
しっかりと作業したいと思います。