2017.05.11
コードバンの3方ファスナー長財布
ロックスターの風貌を持つ
きらきらと輝くようなクライアント。
見た目の持つイメージからはわからない
細やかなお気遣いをしてくださる方です。
現在お持ちの長財布は
「お札の端が折れてしまうので
そうならないお財布を
作ってもらおうと思いました。」
このリクエストは
案外少なくないのですが、
これを解決するには、
いくつかの選択肢の中から
ご自分の考えや
使い方にあったものを
お選びいただくことになります。
というわけで
出来上がったのがお写真の長財布。
外側の素材はコードバンで、
入手しづらいコニャックカラーです。
コードバンの価格は現在
3年ほど前の2.5倍くらいに
なりました。
エキゾチックレザー(牛革以外の希少革)
を取り巻く状況は
どんどん変転しています。
コードバンは馬の尻の革なのですが、
尻の部分だけの革なので
一枚があまり大きくありません。
ですから、鞄を作るときなど
左右の尻が繋がっている大きさの
革を、目いっぱい使います。
小物の場合、無駄がないように
左右どちらか片方の尻だけの革を
選んできます。
近年、馬の革というと
コードバンしか売れない状況が
続いているとのことで、
他の革の分もこのコードバンに
載せて売るようになったということです。
加工の仕方にも
独自の難しさがある革ですから、
それは仕方のない状況でしょうか。
色を出すのも難しく、
濃いものはたくさんあるのですが、
今回の透明感のあるコニャックカラーは
もっとも珍重されているのに、
なかなか入荷できない状況です。
水染めで染めていますから、
お使いいただき手で撫でることで、
どんどん色濃いツヤが出てきます。
経年変化をする革は
この「水染め」という条件が必須。
それで当店では、牛革は独自の
水染めの革を作ってもらっています。
水染めの革は
芯がしっかりしていて
型が崩れにくい、という特性もあります。
おもしろいですね。
この長財布の革は
これからどんどん馴染んで行きます。
それでも型崩れなく使える、ということは
毎日気持良い手触りを楽しめるということ。
牛革でもコードバンでも、私たちの
五感を楽しませてくれる水染めの革に
ちょっとご注目ください。