2020.05.13
コードバンの端正な手帳カバー 95
エキゾチックレザーの中でも
コードバンは最近、特に人気です。
コードバンには国内製造の革もあれば、
イタリアやアメリカからの輸入革もあります。
お写真でご紹介するのは、
国内生産のコードバンで作った
うつくしく、端正な手帳カバー。
今日はそれにちなんで、お品とは関係なく、
コードバン革についてお書きします。
最近のコードバンは
染料染めで染められていますが、
色落ちのクレームを受けて、
表面に色留めが施されています。
ですから、神経質になることなく
思い切って毎日使うことができます。
何しろコードバンは素材として丈夫ですから。
個人的には、色留めをすることに
全面的に賛成という訳ではありませんが、
そうでないと
かなりの数のクレームが来て、
革自体の生産が立ち行かなくなるとのこと。
その結果として、
色留めしたコードバンが主流になります。
現在の国内生産革は、
何の革かに関わらず、
そういった素材が大勢を占めています。
色留めした革は
変化していかないことが特徴で、
特にお手入れの必要もないことから
便利な素材として多用されています。
その一方、変化していく色留めのない革は
一般的には「使いにくい」と
みなされているかもしれません。
昔から、日本の革製品生産者たちは、
「何が革として本物なのか?」
という命題より、
「消費者からクレームの来ない製品づくり」を
目指してきましたから、
その結果として、本来の革とは
かけ離れた革を当たり前とする常識を、
この国に根付かせることになりました。
真偽のほどは調べられませんが、昔は
合皮と区別がつかない革が
たくさん出回ったため、
「本革」という表示が出てきたのではないか
と想像してしまいます。
「便利」を追求するのであれば、
革は便利ではありません。
ではなぜ、人は革にあこがれ、
革を持ちたいと思うのでしょう?
それにはいくつかの理由があります。
「使うほど良くなっていく」ことを
第一の理由に挙げる人がほとんど、と思います。
しかし市販品の中で、どれだけの革製品が
ほんとうに、使うほど良くなるでしょう?
私たちは、当店の革を使っていただくことで、
みなさまに、「革のスタンダード」を
知っていただきたいと思っています。
当店の革の手触りや安心感や香りは、
他に比べるものがありません。
こういった五感に響く素材が、
人に「そばに置いておきたい」という
気持ちを起こさせるのではないでしょうか。
色留めした革を否定するつもりは
まったくありません。
よく書くように、「何が良い革なのですか?」
という問いには
問いかけた人の数だけ、答えがあります。
でも革のルーツを知っていればもっと、
問いかけた人自身が
自分が何を望んでいるかを探ることができます。
店名の「オーソドキシー」=
「正統派」という言葉のなかに、
「本物」という意味も込められています。