2021.01.5
慶弔時にも使えるレディスバッグ「トラペゾイド」 29
存在感もあり、上品に演出できる
高品質の革があればこそ、
シンプルな形のバッグや財布に仕立てると
その姿は際立って見えます。
ほんものの革の存在感は
比べるもののない、特別なもの。
しかも、シンプルなデザインにすることで、
主役である「持ち主」を影から引き立て、
持つ人の内側からにじみ出る「品の良さ」に、
他人の目をクローズアップさせてくれます。
今回ご紹介しているのが、まさにそんなバッグ。
「トラペゾイド」という名前で
慶弔時にお使いの方も多い鞄です。
そのような「革が主役のバッグ」を
当店は作り続けていますが、
今日はその「当店独自の特別革」が
どのようにして出来上がるかを
お話しましょう。
当店の革は、便宜上「タシ」と呼んでいます
(正式な名前は「グローリー」)。
その理由は
上質の脂をたくさん含ませているからですが、
漢字では「多脂」と書きます。
これはじつは、
当店と栃木レザー㈱内の
当店専属製作チームだけに通じる言葉。
余談ですが、革製品の製作各社が
それぞれ使っている革の名称は、
たとえ同じものがあっても、
統一された、同じ品質のものを指すのではなく、
それぞれの名称、とだけご理解ください。
「カーフ」「キップ」
「カウハイド」「ステアハイド」
「ブルハイド」のように
牛の性別や身体の状況、
年齢で分けられた種類の名前のみが、
共通認識のある名前です。
*ちなみにこの種類の分け方は、
肉牛としてどのように扱われているか
から出ている言葉です。
牛革はあくまでも
肉牛の副産物として出たものですから。
ですから、「オイルレザー」などはおそらく
当店の「タシ」と同じ考え方の名前と思います。
さて、話をもとに戻しましょう。
当店が現在のタシを作り始めたのは、もう
36~37年くらい前のことです。
当時革は、複数の問屋から仕入れていました。
革がもっとずっと売れていた時代ですから、
問屋もたくさんあり、
当店のように、オーダーメイド製作で
少量の革しか扱えないところは
非常に冷遇されていましたから、
革の確保をするのに必要な仕入れ方でした。
ですから、同じ栃木レザー㈱で作ったものでも、
少しずつ違う品質のものでした。
当時革製品もたくさん売れていましたから、
問屋の中には在庫を残さず
大手に全部売ってしまい、
しばらく革を入手できないような時もありました。
そんな時、元の革の色の上に、
こちらが注文した色を載せて売るような問屋があり、
デザイナーはそれにものすごく怒りました。
そこで栃木レザー㈱に乗り込んで、
「こんな革をうちに売るのか~!」と
お見せしたのがきっかけで、
独自の革を作っていただくことになったのです。
*今は新規を受け付けてらっしゃいません。
栃木レザー㈱の名誉のために申しますが、
顔料で元の革の色を変えて売ることは、
当時の問屋がやったことでした…
*当時の問屋は、自分のところで
最終的な色調整をするような問屋も
少なくありませんでした。
それにも関わらず、
こんな小さなお店にひとチーム付けてくださり、
ずっと特別に作ってくださっていることに
心からの感謝を申し上げます。
さて、作ってくれる、と申しましても、
この種の革を
理想に向かって完成させるためには、
革の製造者だけの考えでは進められず、
その革を使って製品を作る人、
また、その製品を使う人との連携があって
初めて、完成への道を歩むことができます。
製品として使い始めて半年くらい経つと、
「今度のレシピでは
使っていくとこんな風になりますから、
もっとxxにして欲しいです。」という
やり取りが延々と続きます。
それを何十回も続けて、
今の品質基準に出来上がりました。
ところがそこへ、「エコ問題」が出て、
使える薬品の質が変わったりしますと、
どうやってそれをうまく使うかが問題になり、
品質は少し変わらざるを得ません。
というわけで、何十年経っても、
「目指す品質」に向けて
最大の努力をしてくださっているのが
栃木レザー㈱の当店チームです。
いつでも、なにか違和感を持ったら
相談に乗ってくれて、対応してくれます。
定番にしているからこそ、の日々の努力。
ありがとうございます。
そして当店の革を気に入ってくださり、
いくつ目かのご購入製品として
この「トラペゾイド」をお選びくださって、
ご自分に合うようカスタマイズくださった
今回の長いお付き合いのクライアントに、
感謝申し上げます。
今回の、肩からも下げられるタイプ、は
たしかに使い勝手が良いと思います。
ありがとうございました。