革製品のオーダーメイド 銀座 オーソドキシー

Order example

2022.08.20

財布として使う見本ありポーチ 20704

 

「いったい何が大変なんですか?

こんなにシンプルな製品なのに…」

とお尋ねされそうなくらい

単純に見えるシンプルなポーチのご注文品です。

 

お写真上がご注文者がお使いのポーチです。

下は同じように見えるサイズに仕上げていますが、

用途を伺ったうえで、サイズには

多少のアレンジを加えてお作りしています。

 

こちらのクライアントは、もう何年も

同じサイズのポーチをお探しだったというお話から、

どれだけサイズにこだわりをお持ちかが

理解できます。

「同じサイズのものがどれほどないことか

よくわかりましたので、

オーダーしようと思いました。」

 

 

 

 

なぜアレンジを加える必要があったか?

それは、この手の布のポーチの作り方では、

見える大きさと実際の容量とに

けっこうな差があるからです。

 

また、素材が違うことからはもちろん、

かなり使い込んだことで

やわやわな柔らかさになった見本品は、

寸法よりも小さく見えてしまいます。

出来上がったばかりの

ぷっくりした革製品の感じでは、

大きく感じてしまうことは避けられません。

 

 

 

 

フルオーダーメイドを期待する方には、

素材違いの見本をお持ちになって

「これと同じ大きさで作ってください。」

という方が少なくありません。

ポイントが大きさである場合、です。

 

そういう時、具体的に、

「どの大きさ」を同じにしてお作りするか?は

ご希望内容によっては

かなり難しい課題です。

 

見える大きさを同じにして欲しいと

思っている方、

容量が同じであって欲しい、と望む方、

手に持った大きさ感が同じであって欲しい方、

などなど、

一人ひとりのご要望はさまざまで、

同じ内容はまずありません。

 

その中には、同じくらいの大きさであれば

それほどこだわりはありません、という方も

いらっしゃいます。

こういうご希望ですと、製作時間は短く済みます。

 

 

 

 

今回の場合、製作側では

ダミーを2つ作っています。

この大きさで2つ作るのは珍しいことです。

 

なぜなら

見本は幅広のパイピングが施されていますから

通常よりずっと

見かけの大きさと容量に違いが出ます。

 

聞き取りによってわかったことは、

入れ物に比べて中身の大きさが小さいので

少し小さくしても使い勝手には響かないのですが、

「この大きさが手の中でしっくりきます。」

というご希望をいただきましたから、

3つの条件が重なる

ピンポイントで仕上げることになります。

 

人間の手の感覚というのはすばらしく鋭敏で、

ほんの2ミリくらいの違いであっても

違和感を感じてしまいます。

 

革製品は、素材である革の性質上

どうしても出来上がりサイズには誤差が出ます。

そしてある超過寸法を超えると、

使い手は違和感を感じる、という事実があります。

 

 

 

 

そこまでは考え過ぎ、と言われるかもしれませんが、

私どもがお作りする

どこにも存在しない新しいフルオーダー品に対して

クレームがつかない理由は、

ここまで考えてお作りするから、と思います。

 

出来上がったものが

最初から自然な感じで

そこにあるように見えたり、

持った時しっくり収まるのは、

シンプルな形の奥にも

幾多の葛藤があるからにほかなりません。

 

この度のご注文は難しかったですが、

のちのち役に立つ内容でした。

遠方からお出でいただき、ありがとうございました。

今度は是非、

使用中のポーチをお見せください。

 

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