2013.07.20
日本の社会に適した持ち物の話
ものに対する愛情を持っていらっしゃるお客様の多い、当店。
今日も、「もの」を巡って、
お客様とおもしろいお話をしました。それをそのままお書きします。
とてもたくさんの内容をお話しましたが、
その中で印象的だったひとつに、焦点を絞ります。
「男性の話題だと、
そりゃ、究極のかばんは○社のものさ、っていう話がよく出るんですけど
あそこのかばんについて、どう思われますか?
ぼくは、あそこのかばんを使っている人達を見ていて、
正直、あまり使いやすいものだとは思えないし、
もしブランド名を隠して売られていたとしたら、
やっぱり買う候補には入れないかも知れない。使いにくそうだから・・・
で、プロから見たら、どうなのかな、と。。」
30代のお客様からのご質問です。
「そうですね、あそこのかばんは、西欧の階級社会では、
アッパーの人たちが持つものですから、
実用として使うと仮定するなら、
使いやすいとは言えないものが多いかも知れませんね。
だってそういう人にはいつも秘書がついていて、
必要なものはすべて、その秘書が持っているのですから。
支配者階級であるファッションの仕上げとして、
威厳あるかばんが必要な人達ですから、
極端な話、中身はサイン用のペンだけ、という感じで使います。
そういう人には、頭のてっぺんからつま先まで、
支度を変えなければいけないTPOがあるので、
それに合わせて、かばんまで細かく持ち分ける必要があります。
だから、ひとつのかばんをずっと持ち続ける、という事はまずありません。
結果として長保ちするわけですが、
そういう使い方をする人ばかりではありませんから、
西欧社会のものを、そのまま日本の社会で使おうと思うと、
それが違う結果になるのは、別におかしなことではありませんね。」
実際、
お店でお目にかかった男性客の持つ○社もので、
現在使っていらっしゃるかばんを拝見したり、
そういった方々から使ったご感想を伺った時には、
重いし、使いにくいですよ、とか、
あまり入らないですよ、とか、
入れすぎると型くずれしてね、とか、
結局は使わなくなった、というお話しを伺う機会は、随分ありました。
このシンプルさがいいんだ、という方にも少し出会っています。
ハードユーザーの女性客たちからは、
一年に一回は買い換えます、という話も聞きます。
カジュアルラインで色のきれいなものは、革が傷つくと直らないので、
何年に一回かは買い換える、という方もいらっしゃるようです。
そういう方々は、革次第、使い方次第で、
「一生使うもの」なんてあり得ない、と認識していらっしゃいます。
最初は、一生もの、と思ってお買いになったとのことですが・・・
ですからみんな、そのブランドが好きで使っていらっしゃる方ばかり。。
「そうですか、結局、
持つ目的が違うかばんを、ぼくたちは使っているんですね!
そういうことか・・・
先日も、知り合いが○社のかばんを買いに行くのに付き合ったんですが、
今、それを使ってるところを見ても、
ぜんぜん使いやすそうでないんで、何だかな、と思ってたんです。
ぼくたちは、○社のかばんを買えるかも知れないけれど、
それをほんとうの意味で使うTPOがない、ということなんだ。。」
奇しくも、その後で尋ねてきた旧知の友人と話をしていて、
階級社会の話になりました。
「どうして日本に、場所のTPOがないかって?
それは簡単な話。日本人には、階級がないから、
誰でもどこへでも行くことが出来る。
先日行ったアメリカのxxでも、おしゃれして出掛ける場所には、
バリッとおしゃれをして出掛けていく人しか 出入りしないんだけど、
日本人の感覚だと、
その時どんな格好をしていても、どこへでも入ってしまうでしょ!
アメリカ社会でも、そういうことはあり得ないんですよ、ほんとは。」
日本の社会に合ったものは、
ほんとうは、日本人が一番よく知っています。
でも、舶来品、と呼ばれた昔から、外国製品は、あこがれの的。
時代がどんどん変化した世の中で、選択肢の多い中、
何でも選べるのに、相変わらずあこがれの的は、舶来品。
そろそろ、別の視点から、
そういうものたちを眺めてみるのも、おもしろいのではないでしょうか。