2024.05.27
クロコダイルの革について
最近お問い合わせが多い革に
クロコダイルもあります。
多くいただくご依頼内容は、
「ポロサス」で作りたい…です。
*ポロサス、マットブラック。
柄の使い方に指定があっただいぶ前のお品。
ポロサスはエルメスが作っていることで
有名な革ですが、みなさまは
なぜその革を指定するのでしょう?
お尋ねくださる方々に質問したところ
ほとんどの方が例外なく気にしていたのは、
ご注文を考えている長財布の大きさに対する
「斑柄の大きさのバランス」でした。
*ポロサス、マットブラック
ここでクロコダイルの基本について
お話ししましょう。
クロコダイル科には4種類あります。
ポロサス(スモール)、
ナイル、シャム(両方とも中間サイズ)
ニューギニア(ラージ)。
カッコ内は斑柄の大きさと思ってください。
この4種がいわゆる「クロコダイル」です。
*ポロサス、マットブラック
これら以外でみなさまが耳にする名前は
カイマン、アリゲーターの2種と思いますが、
この2種はアリゲーター科なので、
革を扱う人であれば
それをクロコダイルとは呼びません。
*ナイル、マットワイン。
さてでは、話を元に戻しましょう。
たしかに斑柄が小さいという特徴によって
ポロサスが一番きれいな革、
と言われていますが、
もし選ぶ革のサイズが小さければ、
他のワニでも充分
長財布に向いた大きさの斑柄になることは
ご存じでしょうか?
ワニ革にもいろいろな大きさがあります。
*ナイルにはきれいな色革が多い。
これを基本に考えていただきますと、
斑柄が中間サイズのナイルやシャムでも、
作るお品の大きさに対してきちんと
適合したサイズの革を選ぶことで、
きれいな小さな斑柄で
お作りすることができます。
それで当店では毎回
ご注文サイズに合わせた
特別な型紙を作ったうえで、
デザイナーが革選びに出かけます。
*ナイル、マットダークブラウン。
革の左右端の斑柄の形で判別する
クロコダイル3種類の違いも
(100%判別できる人はいるでしょうか?)
製品になってしまえば
端の斑柄の形まではっきりわかりませんから
さほど気にならないかもしれません。
*ポロサス、マットブラック
むしろ元の素材の革が適合サイズであれば、
真ん中から外側へ向かって
大→小へと向かう斑柄の変わり方が見え、
1枚の革をシンメトリーで
ゴージャスに使った製品になりますから、
クロコの種類云々には目が行かず、
まず最初に
全体のステキさが先に目につくことでしょう。
*製造上シャインタイプは、ポロサスでは
ほとんど作られない。
ところで、もともと革を選ぶ時は、
その時たまたま市場にある
革の中から見つけるしかありません。
デザイナーの最近の経験からしますと、
ポロサスの中から、
斑柄が真っ直ぐで
島の無いパーフェクトな柄を探すのは
却って至難の業かもしれない、
というお話のようです。
*ポロサス、マットブラック、
しっぽ部分の竹斑。
では、
なるべく揃った小さめの斑柄を探すには
どうしたらよいでしょう?
それは、ポロサス以外の革も当たってみること
です。当店では、
きれいなナイルを持っている革屋さんに
頼っています。
ちょうど長財布に適したサイズ展開で
きれいな斑柄の革は、
むしろナイルの方が多いかもしれません。
*シャインタイプは
ポロサスでないことがほとんど。
このお話を
ポロサスをご希望の方々にお話ししますと、
ほとんどの方がどちらでも良い、
おっしゃってくれます。
結果的に
ナイルになることがほとんどですが、
出来上がったオーダー品をお見せしますと、
「かっこいい!
この柄の小ささが欲しかったです。」
と言ってくださいます。
*ポロサス、マットブラック。
だいぶ前のオーダー品です。
もちろんデザイナーは
みなさまがクロコダイル革に何を求めているか
それをお聞きした上で、
必要な場合に限って
ナイルもお薦めしているのです。
*ナイル、シャインブラック。
ですから実際、現在、ポロサスで
パーフェクトな革をお探ししている
クライアントもいらっしゃいます。
デザイナーはすでに何度か
革屋さんまで出かけて見ておりますが、
なかなか難しいようです。
世界中の革の中でもっとも良い革は、
製作量が多い有名ブランドが
まず持って行きます。
その後、製作量に応じて
次のブランドが持っていき、
さらに次のブランド・・・
という風に革は選ばれていきますから、
製作量の少ない日本へ来る革には
なかなか有名ブランドで扱っているような
革が見つからないのが現実です。
でもそうした中で
各製作品に合わせた大きさの革で、
幾枚もの中から(タイミングによっては
幾枚もないこともあります)
良い斑柄の革を選ぶことができれば、
素晴らしい製品ができます。
名前や出回っている情報だけに
惑わされることなく、
実際どうなのか、いろいろな意味で
現状を知っていただき、ご自分に
一番合ったご判断をしていただくために、
プロの眼と技を上手にお使いください。