
2025.04.17
理想のショルダーバッグ 412N
お写真を見ると
とてもシンプルなショルダーバッグに
見えると思いますが、
細かいところに気遣いあるオーダー品です。
ご注文者は手の感覚が少し弱く、
開け閉めの楽なものをご希望でした。
ですから、開けやすく閉じやすい
フタ幅と質感にしています。
もっと大きいサイズでしたら、
まずこのような使い勝手にはなりません。
今回は、そういうコンサルティングをしながら
ご注文をお決めいただきました。
遠方の方なので、最初に
ご希望の形を既製品のお写真を使って
ご説明くださいましたが、
そのご希望内容は、プロからしますと
形状と相反する質感を持っていましたから、
現実的に作るとなると
幾重もの方策が必要になるため、
高額なお見積りになってしまいます。
お書きしたように、今回のご注文は
ご希望内容に大きな齟齬があったため
なぜ高額になるのかをご説明し、
どうすればお値段を抑えられるかを
ご納得いただいたものです。
たいていの場合、
面談でコンサルしながら
お話ししていきますと、
それぞれの革の特徴や形の特徴・
質感などをきっちりご説明することで、
無理のない自然な形状で
ご希望通りに仕上がる方向に
お話が進んでいきますが、
今回は遠方の方なので
そのやりとりをメールで行いました。
メールでご希望を伺う場合
今回のようなケースは稀なので、
とても勉強になりました。
最初にざっくりと上記の説明をしてから
お見積もりをお出しし、
もっと別の方法ならば
お見積もり金額を落とすことができると、
お話しすべきだった、と思います。
ところが今回は
最初にご希望通りのお見積もりだけをしたため、
ちょっとなあ…とこちらが
感じるような金額になってしまいました。
これが
「言われた通りに作る」だけのことなら
プラスにならない、という具体例です。
コンサルティングが超必要な場面。
ご注文者が当店に期待する
「どんな形でも作ることができる」ことと、
製作上の形状と希望の質感を
「無理せずきれいに合わせる」こととが
齟齬をきたす場合、
お見積もりが高くなることは必然だ、と
最初にご説明する方が良いことがあります。
今回はそれに該当しました。
技術面でわかりやすい説明を試みますと、
まず当店であれば、外縫い、内縫いともに
全体の質感を
硬くも柔らかくもお作りすることができます。
ただし、本来柔らかく出来上がる形を
硬く作るにはなかなかのお手間がかかります。
革は
使っていくと柔らかくなる性質だから、
ということもあります。
革の性質をうまく使うことで
加工が複雑にならず
製作できる場合もありますし、
使っていくと柔らかくなることを前提に
出来上がりの形を考えることで、
無理の無い形を目指すこともできます。
製作方法はケースバイケースで
1:1対応でしかなく、
この場合にはこれが当てはまる
というセオリーは残念ながらありません。
そこが
フルオーダーメイドを難しくしている
所以です。
ですからご希望内容によっては、
なかなか良い案をお出しできないことも
ごくたまにですが、あります。
それは、量産品に似たお品を作る場合
その量産品独自の作り方が、
材料から揃えなくてはならない
フルオーダーメイドにとって、ハードルが高い、
という事実から来ることもあります。
今回は最初に
もっと大きいサイズをご希望いただきましたが、
それでは開け口が定まらず
うまく口が留まらないことを、
ひとつ目のダミーバッグを使ってお見せしました。
上のお写真は、サイズが定まった時の
ふたつ目のダミーバッグです。
お使いいただいて少しお時間が経てば、
新品のショルダーバッグも
こんなふんわりした柔らかいイメージに
なっていきます。
いまごろうまくお使いいただけていることを
願っております。
雨除けもしておきましたから
その点も大丈夫と思います。
何かありましたらいつでもご相談ください。
ありがとうございました。