2017.05.27
革バッグなど製品の経年劣化について
先日、知り合いの60代の女性が
こんな話を始めました。
「私ね、ブランドのバッグが大好きで
たくさん持っているんだけど、
ああいうものでも、使わなくっても
どんどん劣化しちゃうのね!
パイピングの革が剥げてきたり、
内側がべたべたになったり、
持ち手がくっついちゃったり…
そんなに古くなくても、3年くらいで
そんな風になっちゃうのもあって、
びっくりしちゃった。
ブランド品にはそういうことがない、
って思いこんでたから…
どんなに高いバッグでもそうなるって
やっと最近気づいて、
買ったらすぐ使うようにし始めたの。
遅きにしも非ずなんだけど…」
そうです、ものは何でも
時間が経つとともに、劣化します。
どんなに大切に持っても
どんなにきちんとしまっても、
一定の時間が経つこと、が
何かしらの問題を引き起こします。
彼女は話を続けました。
「靴もそうなのよ、
3年ほど前に買った弔辞用の黒がね、
まだ2~3回しか履いてないのに
先日履こうとしたら底が取れちゃったの。
まあまあいいお値段だったので
修理に持ってったら、
”これは履いてないから
劣化しちゃったんですよ”って言われて…」
(靴のこの説明は違うと思います、
単純に接着剤の経年劣化のようでした)
すでに当店でご注文いただいた方ならば、
他店でお求めになったお品についての
ご質問やご相談もお受けしています。
それは、革との正しい付き合い方を
知っていただきたいからです。
ただ、そういうことをしているとは、
はっきりと謳っていません。
あまりに複雑な内容だからです。
面白いことにクライアントのみなさまは
有名ブランド品をお持ちにもかかわらず、
トラブルがあると、なぜか
まず私どもにご相談くださいます。
中にはあまり縫製の良くないものや
わずか数回使っただけで
壊れてしまったものもありましたし、
1~2年で外側の素材がべたついたり、
保管の仕方もきちんとしていて
そんなに年数も経っていないのに
色が抜けてしまった革などもありました。
ブランド品の価値は、「信頼」です。
ですから何か商品に問題が出た場合には、
まずそのお店へ足をお運びいただくことを
お薦めします。
そのためのブランド価格ですから。
でも残念なことに、
大きなブランドに対して
こうしたクレームを伝える人は
なかなかいらっしゃらないようです。
製造方法は、
各ブランドによって違います。
また製造元であればこそ、
替え金具のご用意もあるでしょう。
だからこそ、お持ちのブランドへの
ご相談が、修理などには一番の近道なのです。
とはいっても、どんな大ブランドでも
店頭にいるのは売り子だけですから、
その場ですぐ質問に
答えられるわけではありません。
また、何をどんなふうに聞けば、
ご自分の知りたいことを知ることができ
やってもらいたいことが可能になるのか、
わからない方は多いと思います。
その場合はストレートかつシンプルに
1.いつ、どこの店舗で買ったのか
2.起きてしまったトラブルの状況
3.どう対処してほしいのか
を現物を見せながら
お話いただくことをお薦めします。
ついでに、どれくらい持つの鞄なのか
質問してみたり、
同じようなクレームは多いのかも
お尋ねしてみると
そのブランドの考え方がわかって
興味深いと思います。
大切なことは
あなたがそれを相談することで、
ブランドは改良点を正しく見い出せます。
それがブランドを育てることになり、
良いものづくりへと繋がるのです。
幸いなことに、当店には
他社ブランド品に関係しているご相談も
たくさんいただきますので、
自社のお品づくりの教訓となっています。
各製品をお見せいただくと、
それぞれの有名ブランドが
何を軸として製品を作っているのか、や
縫製工場を変えたタイミングなどまでが
わかって、じつに興味深いご相談です。
例えば、きれいな色の革は、
よほど特殊な加工をしない限り
いずれは色が抜けていきます。
それが3年で起きるのか、
10年で起きるのかは誰にもわかりません。
市販品は、売ってしまえばそれまでです。
さいわいクレームをつける人もいませんし…
当店では、ベーシックな色揃えですが、
20年使っても色の抜けない革を
作ってもらっています。
使っていくと、手に馴染み
身体の一部になって行くような
手触りのいい革です。
なぜその革を
自社の素材と定めたのかを
知っていただければ、幸いです。