2022.09.11
3年半プライベートタイムにお使いのクラッチバッグ
個性的なファッションでご来店くださる
クライアントは、3年半ほど前に
ご注文くださいました。
たまにご来店くださり
どんな風に変化していくかを
見せてくださいます。
ありがとうございます。
お写真のように、だんだんと型押しがはっきりして、
絶妙な色合いになりました。
*柄がよくわかるよう、画像は明るくしています。
「全体を撫でていますよ。」嬉しい言葉です。
イタリアのモノづくりはとても興味深くて、
使い込んで行った時の変化が、おおむね
アンティーク品のようになることが多い気がします。
私どもの以前のお店、代官山店は、
スペインの有名靴店が
部材も職人もイタリアから招いて作った
本格的イタリア式内装でした。
いまも居抜きで入った次の物件の方が使っています。
大理石をふんだんに使った床と置き棚で、
ベージュ形のコテの後が少しだけ見えるような
微妙な壁面をしていました。
ある時、建築をやっているという女性が訪れ、
内装を見せてください、と言います。
「あまりにステキなので
入ってきてしまいました。この壁は
32工程を踏んでやっと出来る壁なんですよ。」
毎日見ていて、
複雑であろうことはわかっていましたが、
ああ、やはりそれほどの壁だったのだな、
と納得しました。
帰り際に彼女が
「この壁は、拭かないでくださいね。
このタイプの壁はチリやホコリがついていって、
お掃除しなくても、いい感じになるんですよ。」
とひと言付け加えてくれました。
壁はいつもきれいに見えていましたので
拭き掃除は全くしていませんでしたが、
そういえば
手入れもしなくてアンティークのようになる
すばらしい壁だと、つねづね感じていました。
*ちょうど良いサイズで中身が入ったところ
当店がたまに入れるイタリア製牛革にも
それと同じ匂いがあります。
どうやって作っているのか想像できない
複雑な革加工をしていながら、
見た目のデザインはシンプルで
理想的な色目をしていて、
あくまでも加工で表現していますから
使っていくと劣化はしますが、
その劣化の仕方が何とも感じよく、
使った後の姿にも愛着を感じることが出来ます。
その感じは、当店特製牛革が古びていく時と
同じような雰囲気を持っています。
ハイブランドの革は「変わらない革」を目指し、
イタリアのワークショップはごく自然に
「変わっていくことを前提にした革」を
作っているイメージでしょうか。
使っている最中の革を見せていただくことから
学ぶことはたくさんあります。
このようにお見せいただくことは、
ありがたいことです。