革製品のオーダーメイド 銀座 オーソドキシー

Order example

2024.03.21

ジャンル違いのオーダー品、ブレスレット用ベルトひも 31105

本日ご紹介するお品は、

一品もの製作のお店にご注文いただくには

ジャンル違いのお品なので

ご紹介を止めようかとも思いましたが、

それはなぜ?違いは何?

というご説明があれば

読む方にとっておもしろいかな?

と思ってお書きすることにしました。

うまく書ければお慰み。

 

あくまでもこれはひとつの例ですが、

今回の製品としては

ブレスレットにする細い革の帯、です。

 

裏地なし、端と裏磨きのみ、縫わない

(見本もそうだし、縫えない幅だから)、

長さは指定していただく、

この4条件をOKとしていただいたので、

今回は特別にお作りしました。

デザイナーがお世話になっている

友人からのご依頼という経緯でした。

 

 

 

 

 

 

なぜこれがジャンル違いかと言えば、

端的に言いますと

私どもの製作方法とは違う製品だから、です。

 

どこが?と思う方も

いらっしゃいると思います。

簡単そうですよね、

金物に合う幅に革を切ってはめるだけ、

と思う方も多いと思います。

 

ところが

元のブレスレットを拝見しますと、

きっちりした作りで仕上げられています。

 

元のブレスレット、革は薄いのですが、

その驚くほどの薄さにも拘わらず

革の裏地がついています。

2枚の革が、縫われてないのに

剥がれることもないですし、

きれいな端処理もできています。

 

さて、こういう製品は

どのように作られているでしょう?

 

縫わずに仕上げるベルトのプロダクトは、

製作物に合わせた性質の材料を使って

量産用に特化した機器で作られます。

 

1枚の革を丸ごと薄く漉く機械、

全面2枚を剥げないように張り合わせる

特殊な接着材や張り合わせ方法、

貼った革を

細い紐に一気に裁断する機械、

端処理をする機械もあります。

どの工程もすべて、専門工場の仕事です。

 

機器を使わない手作業は最後のひと段階で、

出来上がった紐を金具にセットするだけ。

 

ところが同じものをすべて手作業で作る場合、

貼り合わせる糊の種類も違いますし

(貼り合わせ作業の意味が違うからです)、

幅と厚みを金具に合わせて、作業者が

革を手でカットしなくてはなりません。

7ミリという細い幅で長く紐をカットするのは、

機械がやることと違って

高い精度で行うことはとても難しいです。

意外でしょう?

 

機械は、ある一つの作業だけを

精度高く、確実に、簡単にできるように

特化されていますから、

人間の手で行うに向いていない作業を

効率よくできるように作られています。

 

 

 

 

 

 

 

それでこの作業は、私どもにとって

「ジャンル違い」となるわけです。

 

私どもは

自分たちがお受けする仕事に対して

対価を頂戴しておりますから、

ジャンル違いの作業になりますと

その対価をつけられるほど完璧な製品に

できないことはわかっていて、

それで困ってしまうわけです。

 

幅がもっと細ければ

それこそハンズで選んでいただけますが

(これが最上の判断なので、細い紐なら

デザイナーはハンズをお薦めしています)、

微妙な幅のものはどこにもありません。

 

必要な厚みにして、紐を細く切って、

端に色を付けて磨き、金具にセットする。

これだけのことであっても、作り出す前に

あらゆることを考え併せ、

ベストな答えを出しています。

無駄なトライアルをするのではなく

(今回の場合でいくと

見本とまったく同じ方法で作ることは無駄)

製作者と依頼者にとってベストな答え、です。

 

それでも、たくさん考えて

細心の注意を払って作った結果として、

出来上がったものは恐ろしく単純なものなので

どう値段をつけるか、

製作側にとってとても難しい問題になります。

 

こうして書いてきますと、

縫わずに、裏を貼って仕上げるベルトは

私どものオーダーメイドには向いていません。

というのが、答えになるでしょうか…

 

 

 

 

 

 

じつはこのオーダーが

私どものところに来るまでに

こんな経緯があったとのことです。

 

「懇意にしている革製品の工場や

個人の製作者を

何件もお訪ねしたのですが、

どこも相手にしてくれなくて…」

また、どこも、作ってくれない理由も

何ひとつ説明してくれなかったですし、

ほぼ無視された、とおっしゃってました。

 

そうですね、ここまでの説明をするには

何がどうなのかを

まとめてからお話ししないといけません。

 

私どももこうして書きながら

考えをまとめていき、

何がどう向いていないのか

きちんとした説明を完成させるまでに

けっこうなお時間がかかっています。

 

わかりやすく書けた、と

自分たちで思っても、みなさまに

正確にご理解いただけたかどうかは

わかりません。

そのような説明に時間を割くメーカーは

まずないでしょう。

そんなことに興味すらないかもしれません。

 

物事を正確に伝える言葉を練ることは

特殊で、難しいことです。

 

まあ、でも今回のオーダーがあったから

おかげさまで、

当店のオーダーメイドに

向いていないアイテムをひとつ、

明記することができるようになりました。

「縫わずに仕上げるベルト」

 

みなさまに

楽しく理解していただけることができれば

今回のコラムは成功なのですが、

さて、いかがだったでしょう?

 

追伸:

もうひとつジャンル違いをお知らせします。
縫わずに、貼るだけで仕上げる製品です。
例えば、
スマホのシェルカバーで、革を張ったもの。

また、完全な手縫い製品も
当店では作っておりません。

 

 

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